出生児1,000人に対し1~6人の割合で生じる重症HIE
大阪市立大学は11月16日、低酸素性虚血性脳症(Hypoxic Ischemic Encephalopathy:HIE)に対する自己さい帯血治療の第2相試験を、2020年11月12日より開始したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科の新宅治夫特任教授(障がい医学・再生医学寄附講座)らの研究グループによるもの。
画像はリリースより
新生児が生まれた際、呼吸や脈拍が弱くなっている状態を重症仮死と言う。その主因とされている周産期のHIEは、出生時の脳への血流遮断によって脳神経細胞が低酸素と低血糖に陥ることが原因で引き起こされ、重症のHIEは、出生児1,000人に対し1~6人の割合で生じる。
有効な治療とされている新生児の体を冷やす低体温療法を施した場合でも、半数は重篤な後遺症が残り、運動困難や筋肉がこわばる脳性まひの主因となっているのが現状だ。
さい帯血から採取した幹細胞を出生後24時間ごとに3日間かけて点滴投与する治療法
研究グループが取り組んでいる「自己さい帯血幹細胞治療」は、脳障害の回復を目的に、HIEの新生児に対し、自分のさい帯血から採取した幹細胞を出生後24時間ごとに3日間かけて点滴投与する治療法。自身のさい帯血を用いるため、拒絶反応を防ぐことも可能だ。
治療の安全性を確認するための第1相試験に必要な6症例の試験が終了し、安全性の検証が確認できたことから、今回、治療の実施可能性と効果を確認するための第2相試験を11月より開始した。
第2相試験では第1相試験の2〜3倍となる15例の症例が必要となる。同試験は、岩手医科大学、大阪市立総合医療センター、大阪市立大学、倉敷中央病院、東京都立小児総合医療センター、獨協医科大学、名古屋大学、日本大学、淀川キリスト教病院の9施設で開始。今後、18施設まで増やして実施する予定だとしている。
第2相試験では第1相試験の2〜3倍となる15例の症例が必要となる。岩手医科大学、大阪市立総合医療センター、大阪市立大学、倉敷中央病院、東京都立小児総合医療センター、獨協医科大学、名古屋大学、日本大学、淀川キリスト教病院の9施設で開始。今後、18施設まで増やして実施する予定だとしている。
今回の第2相試験において、さい帯血幹細胞の分離装置がない施設では、民間さい帯血バンクの株式会社ステムセル研究所に依頼し、さい帯血を輸送。調製した細胞液を用いて自己さい帯血幹細胞治療ができるかどうか、その安定性・安全性と実現可能性について検討する予定だという。
今回の臨床研究が成功すれば、より多くの病院でこの治療を実施することができるようになる、と研究グループは述べている。
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・大阪市立大学 プレスリリース