肝硬変モデルマウスに対して高い抗炎症、線維化改善効果を確認
新潟大学は11月12日、株式会社ステムリムから塩野義製薬株式会社へ導出済みの再生誘導医薬開発候補品レダセムチド(開発コード:S-005151)について、B型肝炎、C型肝炎、脂肪肝、アルコールによる慢性肝疾患・肝硬変患者に対する医師主導治験(第2相試験)を新潟大学医歯学総合病院で今年度より開始すると発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野の寺井崇二教授と土屋淳紀講師ら、ステムリム社、塩野義製薬の研究グループによるもの。
レダセムチドは、HMGB1の部分人工ペプチド。レダセムチドを用いた基礎研究では、肝硬変モデルマウスに対して高い抗炎症、線維化改善効果を認めている。また、同剤はすでに安全性を確認する目的の第1相試験や栄養障害型表皮水疱症患者を対象とした第2相試験が完了。レダセムチドは、これまで治療法のなかった線維化を伴う慢性肝疾患・肝硬変の患者に対し新たな治療の選択肢になり得る可能性がある。
慢性肝疾患は、B型肝炎、C型肝炎、脂肪肝、アルコール等が原因で長期に肝臓が障害を受け、徐々に障害部に線維化が起こるとともに肝機能が低下し、進行すると肝硬変となる。肝硬変は進行すると黄疸、腹水、肝性脳症、凝固障害などをきたす致死的な疾患で、日本の患者数は推定40万人程度とされている。
研究グループは、間葉系幹細胞(MSC)が体内のマクロファージに影響をおよぼすことを利用して、進行した肝硬変に対する新規治療開発に取り組んでおり、また、内在のMSCを誘導剤として用いた基礎研究を行ってきた。
今回、大阪大学大学院医学系研究科の玉井克人教授の研究グループ、ステムリム社と共同研究を進め、肝硬変モデルマウスでレダセムチドの高い治療効果が確認されたため、ステムリム社、塩野義製薬と共同で、今年度より新潟大学医歯学総合病院で医師主導治験を開始する。
12月より患者登録開始、今年度中に製剤の投与開始予定
今回の治験の対象者は、B型肝炎、C型肝炎、脂肪肝、アルコール等が原因の慢性肝疾患患者が対象で、MRIの測定で一定以上の肝硬度がある患者で、肝機能が一定の基準以下(Child-Pughスコア7点まで)、おおよそ肝硬変の初期~中期にかけての患者だ。
合計10例の患者に1か月間でに4〜7回投与を行い、6か月間追跡調査を行い、安全性と肝線維化・肝機能の改善効果があるかを確認する。12月より患者登録を開始し、今年度中に製剤の投与を開始する予定だ。
今回の治験は、現在治療薬のない肝線維症に対する効果を期待するもので、線維化を伴う慢性肝炎・肝硬変に対し有効性が確認された場合、新たな治療の選択肢になり得る。新たな治療法として期待される、と研究グループは述べている。
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・新潟大学 研究成果