産後4、12、24、36か月後に母親のうつ症状をスクリーニング
米国立衛生研究所(NIH)は10月27日、産後3年間で抑うつ症状を経験する女性は約4人に1人いることを、約5,000人の母親を対象とした調査から明らかにしたと発表した。これは、NIHの関連施設であるユーニス・ケネディ・シュライバー 国立小児保健・人間発達研究所(NICHD)のDiane Putnick博士らの研究グループによるもの。研究成果は、「Pediatrics」に掲載されている。
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今回の研究は、人口統計ベースの出生コホート研究「Upstate KIDS study」のデータを用いて行われた。このコホート研究は、米ニューヨーク州の57の郡において2008~2010年の間に生まれた乳児とその母親約5,000人を追跡したものだ。周産期の状況等は、産後3年間(4、12、24、36か月後)におけるバイタルの記録、および、5項目のうつ病に関する質問票で評価した。なお、この研究の対象は主に白人の非ヒスパニック系女性で、臨床的にうつと診断されてはいない。
産後3年でうつ兆候が現れた母親は約25%
その結果、産後の症状変化によって4つの軌跡に区分された。「うつ兆候が継続して低い」74.7%、「始めはうつ兆候が低かったが高くなった」8.2%、「最初は中等症のうつ兆候だったが軽減した」12.6%、「うつ兆候状態が継続して高い」4.5%。全体で約25%の女性にはうつ兆候が現れていたことがわかった。
また、各グループのリスク因子を分析したところ、「高齢出産」(3つの比較の最大オッズ比:1.10;95%信頼区間[CI]:1.05~1.15)と「大学(短大)での教育を受けた経験」(最大オッズ比: 2.52;95%CI:1.36~4.68)は、「うつ持続兆候が継続して高い」群以外の3つすべてに関わっていたことがわかった。
気分障害や妊娠糖尿病の経験が抗うつ状態の継続に影響した可能性
さらに、「気分障害」(最小オッズ比:0.07;95%CI:0.04〜0.10)または「妊娠糖尿病診断」(最小オッズ比:0.23;95%CI:0.08~0.68)は、「うつ兆候状態が継続して高い」群での関連が高かった。その他、不妊治療や多胎出産、妊娠中のBMI、妊娠性高血圧、乳児の性別についても検討したが、それらによる差は見られなかった。
米国小児科学会は、産後1、2、4、6か月の時点で、産後うつについて小児科医が母親に問診することを推奨している。しかし、今回の研究から、産後6か月まででは抑うつ症状の測定に十分ではなく、最低でも産後2年間は追跡調査をしたほうがよい可能性が示された。「これらの長期的なデータは、母親のメンタルヘルスについての理解を深めるための鍵となるだろう。産後うつに関するより包括的なデータを提供するために、より多様で幅広い集団を対象に調査を行わなければならない」と、研究グループは述べている。