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次亜塩素酸水の一種、10ppm強酸性電解水が新型コロナを不活性化-大阪医科大ほか

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2020年11月06日 AM11:45

軟性内視鏡の消毒に用いる強酸性電解水のSARS-CoV-2に対する不活性化は?

大阪医科大学は11月2日、次亜塩素酸水の一種であり、医療用内視鏡の消毒に用いる有効塩素濃度10ppmの強酸性電解水が新型コロナウイルス()を不活性化できることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大微生物学教室とカイゲンファーマ株式会社の研究グループによるもの。研究成果をまとめた論文は、学術雑誌投稿に向け準備中だ。


画像はリリースより

強酸性電解水は、低濃度の塩化ナトリウム溶液を電気分解することにより簡便に生成でき、医療現場では医療機器である軟性内視鏡の消毒や手指の消毒に使用されている。また、タンパク質などの有機物により容易に失活するという特徴を持つため、廃棄の際に環境負荷が少ないことが知られている。

しかし、軟性内視鏡の消毒で使用されている強酸性電解水の有効塩素濃度は10ppm前後と、先行研究においてSARS-CoV-2に有効(不活性化99.9%以上)と報告された次亜塩素酸水の有効塩素濃度(35ppm以上)より低い濃度だ。

先行研究で35ppm未満の有効塩素濃度(試験に供されたのは19~26ppm)ではSARS-CoV-2不活性化が99.9%未満にとどまった。しかし、ウイルス液中に5%の血清を含む試験系で実施されており、血清中には多量のタンパク質が含まれることから、強酸性電解水の効果が減弱されている可能性が考えられた。このことから、研究グループは、血清濃度を低下させた試験系を使用すれば、35ppmより低い有効塩素濃度であっても、強酸性電解水はSARS-CoV-2を不活性化する可能性があると考えた。

今回、研究グループは、医療機器である軟性内視鏡の消毒に用いる強酸性電解水(有効塩素濃度10ppm)のSARS-CoV-2に対する不活性化の有効性評価試験を実施した。

強酸性電解水とウイルス液19:1の混合比率、1分間処理で99.99%以上の不活性化

試験には、軟性内視鏡の消毒を想定した強酸性電解水(有効塩素濃度:10.30±0.20ppm、pH:2.61±0.01、酸化還元電位:1114±2.89mV)を用いた。強酸性電解水と2%血清を含むSARS-CoV-2液(1.2×107PFU/mL)を1分間接触させた後、2日間培養し、プラークアッセイ法を用いてウイルス感染価(PFU/mL)を算出。なお、強酸性電解水とSARS-CoV-2液の混合比率は、先行研究と同じ19:1のほか、軟性内視鏡の消毒には大量の強酸性電解水を使用することから99:1の混合比率でも試験を実施した。

その結果、強酸性電解水とSARS-CoV-2液を1分間接触させた結果、いずれの混合比率でもSARS-CoV-2を99.99%以上不活性化した。また、混合比率99:1では、19:1と比較して、より多くのウイルス量が減少した。

ウイルス液中に含まれるタンパク質量が強酸性電解水の不活性化効果に影響

今回の研究により、強酸性電解水は有効塩素濃度が10ppmであっても、SARS-CoV-2を1分間で99.99%以上不活性化することができることが明らかになった。一方で、タンパク質量が少ない試験系である混合比率99:1では、19:1よりも強酸性電解水の不活性化効果が増強される結果となった。これは、当初の想定通り、ウイルス液中に含まれるタンパク質量が強酸性電解水の不活性化効果に影響を与えていることを反映していると判断された。

医療現場での軟性内視鏡の消毒には、数L~十数Lの強酸性電解水を使用するため、混合比率99:1の試験のほうが、より医療現場での実使用に近い試験方法であると考えられます。同時に、医療現場で安定した強酸性電解水の消毒効果を得るためには、従来通り、前もって用手洗浄によりタンパク質等の汚れを十分に除去しておくことが肝要であることを示す。

今回の研究結果は、医療機関での院内感染防止対策に寄与することが十分に期待できるものであり、患者が安心して受診していただける環境を提供し、異常を早期発見するための検査や早期の治療の機会が失われることがないよう、貢献できるものと信じている、と研究グループは述べている。

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