費用対効果評価制度は、市場規模が大きい品目や、著しく単価が高い品目を評価の対象とし、企業分析や公的分析による総合的評価を経た費用対効果の評価結果をもとに価格調整を実施するとされている。
今月1日時点でCOPD治療薬「テリルジー」や白血病治療薬「キムリア」など12品目が費用対効果の対象品目に選定され、分析が行われている。今年度中には複数品目の総合的評価が中医協で審議される見込みだ。
この日の総会で厚労省は、医療保険部会で議論された内容を踏まえ、保険収載の可否を含めた費用対効果評価結果の活用に向け、実施範囲・規模を拡大する方向性を論点として提示したが、各委員からは「時期尚早」との声が相次いだ。
診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、保険収載の可否には用いずに価格調整のみに用いることが費用対効果評価の原則としつつ、「制度運用が始まったばかりなので、影響の検証や課題の抽出を引き続き行っていくべき」との考えを示した。
有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)も、「評価実施体制が確立していない段階と考えており、実施範囲や規模拡大を必要以上に行うべきではない」と慎重な議論を求めた。
支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、「将来的には償還可否の決定に用いることを前提にして影響を検証していく必要があるが、まずは国内で実施事例の集積と分析をスピード感を持って進めることが大事」との考えを示した。
ただ、保険収載から価格調整まで最大で1年半かかる評価期間の短縮と、費用対効果評価の対象品目を拡大することは「重要な課題」とし、「今後、高額な医薬品など対象品目が増えることを考えると、評価体制をいつまでに、どのような陣容でやるのか具体的な工程表をお願いしたい」と評価体制の拡充を要望した。
幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、国内で費用対効果評価の事例が蓄積されることを前提に「現行の仕組みの妥当性を検証する必要がある」と指摘。評価プロセスや保険収載から価格調整までの期間の妥当性に加え、「加算部分と営業利益のみを対象としている価格調整のあり方も検証していかなければならない」とした。
保険収載への可否に費用対効果評価を用いることについては「現行の仕組みを検証した後の次のステップとして、将来的に議論することではないか」と述べた。