診断マーカー「GDF15」を自動測定の「LTIAデバイス」を開発
久留米大学は10月22日、ミトコンドリア病の迅速かつ全自動診断デバイスを、世界に先駆けて開発したと発表した。これは、同大小児科学講座の古賀靖敏教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Inherited Metabolic Disease」に掲載されている。
画像はリリースより
ミトコンドリア病は、ミトコンドリアのエネルギー産生系酵素の遺伝的異常によって引き起こされる希少疾患であり、精神・運動発達の遅れや心不全、糖尿病などの症状を来す、遺伝性進行性難病。古賀教授はこれまでに、ミトコンドリア病の診断バイオマーカーとしてGDF15を発見、国内特許を取得し、その診断精度は感度・特異度98%であることを示しました。その後、日本医療研究開発機構(AMED)の研究支援を受け、株式会社医学生物学研究所(MBL)と共同で、大病院で使用されている汎用自動分析機器に搭載することでGDF15を測定できる診断薬(LTIAデバイス)を世界に先駆けて開発した。
「迅速、ハイスループット、高精度」で、早期発見・早期治療に期待
新たに開発した診断薬を用いた場合、これまでは研究室で検査技師が時間をかけて行っていたGDF15の測定を10分という測定時間で迅速に、しかも全自動で大量の検体が処理可能となり、かつ1検体当たりの測定単価は従来の25%と非常に安価となる。この診断薬によるミトコンドリア病診断の性能は、感度94.0%、特異度91.0%と、これまで研究室での測定に使用してきたELISA製品と同等であり、日本の診断薬としての要件を十分満たすことが検証された。
研究グループは、「この技術により、専門医のいない病院においても、ミトコンドリア病を早期発見、早期治療することが可能となる。また、従来、ミトコンドリア病の診断根拠として用いられていた乳酸値の高値は、3歳未満の子どもでは、採血のために腕を駆血したり泣いたりすることで容易に乳酸値が高くなり、それが誤診の原因となっていた。GDF15は駆血の影響を受けず、何度も繰り返し乳酸を測定する必要も無くなるため、患者さんの負担も減る。GDF15は既にミトコンドリア病を診断する際の重要な検査となっている」と、述べている。
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