主に「卵白」が原因の一般的な鶏卵アレルギーとは異なり、「卵黄」で症状誘発か
慶應義塾大学は10月15日、主に「卵白」が原因となる一般的な鶏卵アレルギーとは異なり、食物蛋白誘発胃腸炎は「卵黄」により症状が誘発される可能性が高いことが明らかにしたと発表した。この研究は、同大小児科学教室アレルギー研究グループの高橋孝雄教授、明石真幸講師、森田久美子助教、川崎市立川崎病院小児科の外山陽子医長、国立成育医療研究センターの免疫アレルギー・感染研究部の森田英明室長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice」掲載されている。
画像はリリースより
食物アレルギーは、原因食物を摂取してから1時間以内にじんましんなど皮膚症状や、くしゃみ、咳、喘鳴の呼吸器症状を認めるIgE依存型アレルギーがよく知られている。
一方で、原因食物を摂取してから数時間以降、主に嘔吐や下痢などの消化器症状を認める食物蛋白誘発胃腸炎が存在し、近年患者数が増加していることが知られている。しかし、IgE依存型アレルギーと比較して、鶏卵の食物蛋白誘発胃腸炎の臨床的特徴は不明な点が多く残されており、卵のどの成分によりアレルギー反応を起こしやすいのか明らかになっていない。
食物蛋白誘発胃腸炎GL基準を満たした乳幼児23人中26人が「卵黄」に反応
今回の研究では、2015年1月~2019年10月までの間に、慶應義塾大学病院、さいたま市立病院、けいゆう病院、国立病院機構栃木医療センター、平塚市民病院、川崎市立川崎病院を受診した、鶏卵が原因と疑われる食物蛋白誘発胃腸炎患者42人のうち、食物蛋白誘発胃腸炎の国際ガイドラインの基準を満たした乳幼児26人を対象とした。
対象者の「卵黄」と「卵白」それぞれに対する反応性や臨床情報について、電子カルテデータを用いて後方視的に解析。その結果、26人のうち、「卵黄」と「卵白」を別々に食べた23人全員が「卵黄」に反応して症状が誘発された。そのうち3人は、「卵黄」に加え「卵白」にも反応したが、「卵白」にのみ反応する患者はいなかったという。
さらに、経口負荷試験を行った15人の患者を対象とした詳細な解析では、「卵黄」では極微量でも症状が誘発されたのに対し、「卵白」では「卵黄」と比較して多くの量を摂取しても症状が誘発されない患者が多いことも明らかとなった。
アレルギーの原因成分解明で、病態の解明に結びつく可能性
一般的に、「卵黄」は「卵白」よりアレルギー反応を引き起こしにくいと考えられているが、「卵黄」を摂取した数時間後に繰り返し嘔吐を認めるような場合は、鶏卵による食物蛋白誘発胃腸炎が疑われる。
同研究をさらに進めることで、「卵黄」の中のどの成分がアレルギーの原因となっているのかが明らかになれば、食物蛋白誘発胃腸炎の病態の解明、治療法の確立に結びつく可能性がある、と研究グループは述べている。
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