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進行前立腺がんの新たな治療薬候補を開発、SUCLA2遺伝子欠失細胞を標的に-金沢大

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2020年10月15日 AM11:30

進行前立腺がんではRB1欠失に付随しSUCLA2が欠失

金沢大学は10月13日、進行前立腺がんの弱点を突く新しい治療薬の開発に成功したと発表した。これは、同大がん進展制御研究所の河野晋特任助教と髙橋智聡教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Oncogene」オンライン版に掲載されている。

前立腺がんは、胃がんや肺がん、大腸がんなどと並び、男性が罹患するがんの中でも患者数が多く、特に60歳以上の高齢男性の罹患率が高いがんだ。比較的に進行が遅い特徴を持つが、転移することがあり、すでに他臓器に広がっている場合は「進行前立腺がん」と呼ばれる。進行前立腺がんは、男性ホルモンを抑える薬を投与して治療するが、このホルモン療法を続けていると2年ほどで効果が出にくくなることもあり、新しい治療法の開発が期待されている。

進行前立腺がんにおいて10~30%の割合で発生する「RB1遺伝子」欠失に付随して起こる「SUCLA2遺伝子」欠失に研究グループは注目した。がんを抑制するRB1遺伝子は、網膜芽細胞腫や小細胞肺がんの発症時に変異・欠失したり、前立腺がんのようにがんが進行するときに欠失したりする。また、SUCLA2遺伝子は、クエン酸回路を構成する代謝酵素の1つをコードしており、生殖系列における変異はミトコンドリア脳筋症という遺伝疾患を引き起こす。また、SUCLA2遺伝子の欠失により、がん細胞の代謝経路に脆弱性をもたらす。


画像はリリースより

化合物スクリーニングで「」を同定、SUCLA2遺伝子欠失がん細胞死の誘導を確認

今回研究グループは、SUCLA2遺伝子を標的としてがんの進行を抑制する新しい治療薬剤を開発した。およそ2,000個の化合物を調査した結果、「チモキノン」と呼ばれる化合物が、SUCLA2遺伝子欠失のがん細胞に、細胞死を誘導し、進行前立腺がんの治療に効果的であることを明らかにした。チモキノンは、「ブラッククミンシード」と呼ばれる植物ニゲラサティバの抽出物の有効成分。抗酸化作用があるとされ、炎症、肝臓病、がんやアルツハイマー病への効能が期待されている。チモキノンが結合する分子標的はまだ判明していない。

RB1遺伝子欠失は、一般にがんの生育のための助けとなるが、進行前立腺がんのかなりの割合がRB1遺伝子に加えてSUCLA2遺伝子の欠失を抱えてしまうため、そのことがかえって、本症の弱点となる。「今回の研究によって見いだされた治療薬は、今後、進行前立腺がんだけではなく、SUCLA2遺伝子欠失が一定程度の患者において観察されている肝細胞がんなど、さまざまながんの新しい治療にもつながることが期待される」と、研究グループは述べている。

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