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口腔内細菌の亜硝酸塩産生活性は舌苔より歯垢で高く、個人差が大きい-新潟大ほか

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2020年10月12日 PM12:15

亜硝酸塩の血管拡張効果、血液循環改善で心筋梗塞などの予防に寄与している可能性

新潟大学は10月9日、口腔内における亜硝酸塩産生活性は個人差が大きいこと、舌苔よりも歯垢で高いこと、またこれらの亜硝酸塩産生には、Actinomyces属、Schaalia属、Veillonella属、Neisseria属、Rothia属などの口腔常在細菌として知られる細菌群が主に関わっていることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院保健学研究科検査技術科学分野臨床化学研究室の佐藤拓一教授、東北大学大学院歯学研究科口腔生化学分野の髙橋信博教授、鷲尾純平講師、佐藤優理亜歯科医師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports誌」に掲載されている。

近年、緑黄色野菜や唾液に多く含まれる硝酸塩が、口腔内細菌により代謝・還元され、亜硝酸塩が産出されることに注目が集まっている。亜硝酸塩は、抗菌作用と血管拡張作用を持つことが知られており、口腔内細菌により産出された亜硝酸塩が、他の口腔細菌の増殖や働きを抑え、う蝕などの細菌性口腔疾患を抑制する可能性が考えられる。また、亜硝酸塩の持つ血管拡張効果により、血液循環を改善し、狭心症や心筋梗塞などの全身疾患の予防に寄与している可能性も考えられている。

しかし、口腔内における亜硝酸塩産出の詳細は不明な点が多く、各部位の口腔バイオフィルム細菌叢に占める硝酸塩還元菌の割合、単位当たりの口腔バイオフィルムの硝酸塩還元活性、さらにそれらの個人差について網羅的に検討した研究はなかった。また、成人と小児では口腔バイオフィルムの状態も異なることが予想される。


画像はリリースより

成人と小児の歯垢と舌苔対象、硝酸塩還元活性と硝酸塩還元菌の種類を網羅的に検索

今回の研究では、成人と小児の歯垢と舌苔を対象として、硝酸塩還元活性と硝酸塩還元菌の種類について網羅的に検索した。成人(20~40歳程度)および小児(5~12歳)を対象に、歯垢と舌苔を採取し、各試料の硝酸塩還元活性を、Griess試薬で測定。また、同試料を血液寒天培地に接種し、好気・嫌気の両条件下で1週間培養後、新たに開発したGriess試薬含有寒天重層法を用いて硝酸塩還元菌を選別し、それらの細菌種について、分子生物学的手法を用いた同定を行った。

その結果、歯垢、舌苔ともに、成人と小児の間で、硝酸塩還元活性(亜硝酸塩産出量)には大きな違いはなかったが、被験者間で大きな個人差が認められた。

舌苔と比べ歯垢における硝酸塩還元活性が有意に高い

また、舌苔と比べ歯垢における硝酸塩還元活性が有意に高いことが判明した。好気・嫌気の各条件下で歯垢・舌苔試料を培養した血液寒天培地上の各硝酸塩還元菌と非硝酸塩還元細菌の数および比率を比較検討したところ、硝酸塩還元細菌数は、成人・小児いずれにおいても、舌苔よりも歯垢中に多い結果となった。硝酸塩還元細菌の占める割合は、成人の歯垢を除き、好気培養よりも嫌気培養で高くなった。

検出された硝酸塩還元菌は、成人、小児共に、好気性条件ではActinomyces属、Schaalia属Neisseria属が多くの割合を占めており、嫌気性条件では、Neisseria属に代わりVeillonella属が多くの割合を占めていた。成人では、舌苔においてNeisseria属の割合が高い傾向があり、小児においては、舌苔における好気性細菌ではRothia属の割合が、嫌気性細菌ではVeillonella属の割合が高い傾向を示した。

検出された主な硝酸塩還元菌、Actinomyces属、Schaalia属、Veillonella属など

今回の研究結果から、単位重量当たりの硝酸塩還元活性は、歯垢の活性が高いことが明らかになった。また、各試料中の硝酸塩還元菌数とその割合は、成人の歯垢を除き、嫌気条件で培養した際に硝酸塩還元細菌数およびその割合が高くなり、特に小児では有意な差が認められた。

検出された主な硝酸塩還元菌は、Actinomyces属、Schaalia属およびVeillonella属であり、これに加えて成人の舌苔ではNeisseria属が、小児の舌苔ではRothia属が多く認められた。これらの菌種は口腔常在細菌として知られており、そのような細菌群によって口腔内の亜硝酸塩産出が担われていることが示唆された。

亜硝酸塩は、その抗菌作用による口腔疾患の予防効果と、全身の血液拡張効果を通した循環器疾患予防効果に注目が集まっており、口腔内細菌の代謝活動が口腔・全身の健康と関わるという視点でのさらなる研究展開が期待される、と研究グループは述べている。

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