FGF21は、肥満・2型糖尿病発症後に増加するのではなく前に増加と判明
東北大学は10月7日、高脂肪食をマウスに与えると、肥満・糖尿病を来たす前に、早期から血中FGF21濃度が増加することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大未来科学技術共同研究センター野々垣勝則教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。
FGF21は、肝臓から分泌されるホルモン。これまで、インスリン感受性を高めるホルモンとして、血中FGF21濃度は肥満や2型糖尿病で代償的に増加すると考えられていた。
ところが、今回の研究において、肥満・2型糖尿病を誘発する高脂肪食をマウスに与えると、インスリン抵抗性、高血糖、体重増加を来たす前に、早期から血中FGF21濃度が増加することが判明。肥満・2型糖尿病の発症を促す食習慣を反映するバイオマーカーとしての役割を有することが示唆された。
非アルコール性脂肪性肝疾患の発症に関与する肝臓の遺伝子セロトニン2a受容体(Htr2a)とERストレスのマーカーのSdf2l1の発現は、インスリン抵抗性発症時に増加した。
画像はリリースより
高脂肪食+ホエイプロテインで末梢セロトニン抑制、肝臓からのFGF21分泌抑制
研究グループは、さらに、高脂肪食を投与した際の血中FGF21、インスリン、セロトニン(5-HT)濃度、血糖値、肝臓におけるFGF21、Sdf211、Htr2a遺伝子発現の変化について検討。乳清タンパク質のホエイプロテインを高脂肪食とともに投与すると、高脂肪食による肝臓からFGF21分泌の増加が抑制され、肝臓でHtr2aとSdf2l1の遺伝子発現の増加を伴うインスリン抵抗性と高血糖が抑制された。この、ホエイプロテインの肝臓からのFGF21分泌抑制効果は、通常食の場合にも同様に認められたという。
一方、末梢由来セロトニンは、高脂肪食で増加し、インスリン抵抗性、脂肪肝、耐糖能障害を起こすことが近年報告されている。研究グループは今回、ホエイプロテインが末梢由来のセロトニン分泌を抑制する効能を有することを発見。さらに、末梢由来セロトニンを合成する酵素(Tph1)を遺伝子工学的に欠損させたセロトニン欠乏マウスにおいても、肝FGF21の発現と血中FGF21濃度の低下が判明した。
これらの所見から、ホエイプロテインは末梢由来のセロトニン分泌を抑制し、肝臓からFGF21分泌を抑制することで、インスリン抵抗性を改善し、高血糖を抑制することが示唆された。研究グループは、ホエイプロテインの摂取は、食事性に誘発される2型糖尿病の発症を予防することが示唆された、と述べている。
また、本効能は、新たな組成物として国内特許出願済である。
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