■薬局向け、2021年4月開始
同学会は、改正薬機法を受け、昨年秋から専門医療機関連携薬局に対応するための検討を進めており、現行の「外来がん治療認定薬剤師」を基礎に、新たな要件として実地研修を追加した専門薬剤師制度を新設することを決めた。
専門薬剤師制度は、病院と薬局が緊密に連携し、癌薬物療法に対応できる薬剤師を養成することが狙い。認定薬剤師が癌診療病院で実地研修を受けるか、実地研修を受けて認定薬剤師試験に合格する二つのルートで取得できる。認定薬剤師の要件に加えて、病院または薬局での勤務歴5年以上、癌診療病院での連携研修の修了が要件となる。
大きな柱となる癌診療病院での実地研修は、コアカリキュラムに沿って行い、1日の就業時間を1単位として全30単位を研修開始から1年以内に取得する必要がある。半日でも0.5単位を取得でき、チェーン薬局のみならず、個人薬局の薬剤師も研修に参加できるよう柔軟な対応が取られた。スケジュールについては研修施設と参加者が調整して最適な研修方法を決定し、1年以内に6週間分の研修を受けることになる。
また、研修を受ける薬剤師は、事前に同学会主催のスタートアップセミナーやブラッシュアップセミナーをe-ラーニングなどで受講し、癌薬物療法に関する最低限の知識を習得する必要がある。
今年度は、パイロット事業として30~40人のモデル研修を実施する予定だ。今月中旬から研修生を募集し、2021年1月から実施する。モデル研修の実施施設は50施設程度の見込みで、研修内容やコアカリキュラムの評価を行って制度の仕組みを検証し、2021年度の本格的な研修につなげる。2021年度の研修施設は2021年1月上旬、研修生は2月中旬から募集開始する予定。
加藤氏は、癌診療連携拠点病院が全国に402施設ある中、「拠点病院の門前薬局2店舗が専門医療機関連携薬局になるとしても、800人程度の認定が必要になる。相当な人数を認定していかなければ、社会的なニーズには応えられないだろう」との考えを示す。
最大の課題は、研修施設の応募である。拠点病院や各地のがんセンターの協力が必須となるが、2021年度の本格実施に向けては、希望者の居住地近くに研修施設がなければ参加できないことになる。
加藤氏は「なるべく全国の各地域に研修施設を設けたい」との意向を示し、研修施設への参加を呼びかけている。
一方で、制度新設時には人材不足が予想されることから、2021年4月から3年間は認定薬剤師に対して、5年以上の病院または薬局の勤務歴をもとに暫定的に専門薬剤師の認定を行うとしている。暫定認定者は2024年3月までに実地研修を終了した場合、正式に専門薬剤師を取得できることになる。これら要件を両方満たした場合は、暫定認定を取得せずに専門薬剤師に移行できる。
加藤氏は「専門医療機関連携薬局として癌患者さんに良い治療を行うためには、病院と薬局がしっかり連携していかなければならない。その部分を短い期間でも研修で体験してもらいたいし、社会の期待に応えるためにも多くの人に頑張っていただき、薬局薬剤師の評価を高めることにつながってほしい」と期待を述べている。