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慢性じんましん、血液凝固反応と補体活性化で生じる-広島大

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2020年10月01日 AM11:45

従来考えられてきた直接作用ではなく、補体系を介してマスト細胞・好塩基球のヒスタミンを放出

広島大学は9月28日 、血液凝固反応により生じる活性化血液凝固因子が、これまで考えられてきた直接作用ではなく、補体系を介してマスト細胞・好塩基球のヒスタミン放出を起こすことを証明したと発表した。この研究は、同大大学院医系科学研究科皮膚科学の秀道広教授、同治療薬効学の柳瀬雄輝准教授と小澤孝一郎教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「The Journal of Allergy and Clinical Immunology」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

慢性じんましんにおいて、毎日のようにかゆみを伴う膨疹が繰り返し出現する理由については明らかになっていない。近年、慢性じんましんと血液凝固反応の亢進が関連していることが指摘されていたが、血液凝固反応が、どのようにして膨疹形成の直接的な原因であるマスト細胞あるいは好塩基球を活性化するのかという仕組みはわかっていない。

TFにより駆動された血液凝固反応、補体を介した皮膚マスト細胞・好塩基球への影響は?

血液凝固反応は、血液が組織因子(TF)に触れることで駆動される。研究グループは、先行研究により、慢性じんましん患者の末梢血単球は健常人よりも多くのTFを発現していること、慢性じんましんの増悪因子であるリポポリサッカライド(LPS)、ヒスタミン、腫瘍壊死因子α(TNFα)などが血管内皮細胞に作用するとTFが発現し、外因系血液凝固反応とそれに続く血管透過性亢進が起きることを明らかにしてきた。しかし、これらの反応が、慢性じんましんの直接的原因となる皮膚マスト細胞の活性化にどのようにつながるのか、そのメカニズムは未解明のままであった。

そこで今回の研究では、活性化凝固因子と補体の関係に着目し、TFにより駆動された血液凝固反応が補体を介して皮膚マスト細胞および好塩基球にもたらす影響を検討した。

セリンプロテアーゼ阻害薬・C5a受容体拮抗薬で抑制

まず、ヒト皮膚マスト細胞・末梢血好塩基球には、活性化凝固・線溶因子の受容体としても知られる、プロテアーゼ受容体(PAR1、2)と補体受容体(C3aR、C5aR)を発現することをmRNAレベルで確認。しかし、外因系凝固反応により生じる活性化凝固因子、Xa、IIa(トロンビン)、線溶因子であるプラスミンや補体成分(C3、C5)単独では、ヒト皮膚マスト細胞・好塩基球を活性化できないことがわかった。

そこで、これらの活性化凝固・線溶因子と補体(C3、C5)の両方で同時にマスト細胞・好塩基球を刺激。その結果、ヒスタミン等の放出が起きることを見出した。また、活性化凝固因子と補体の組み合わせによって起きるマスト細胞・好塩基球の活性化は、セリンプロテアーゼ阻害薬やC5a受容体の拮抗薬によって抑制されることが判明。

これらの結果は、慢性じんましんにおいては、外因系凝固反応が亢進しており、その結果生じる活性化凝固因子が、補体系のC5からC5aを生じ、マスト細胞・好塩基球からのヒスタミン放出を促し、膨疹を形成する経路があることを示している。

血液凝固反応の駆動と補体系の活性化により生じたC5a、皮膚マスト細胞・末梢血好塩基球を活性化

今回の研究成果から、慢性じんましんの病態において、血液凝固反応の駆動と、それに続く補体系の活性化により生じたC5aが皮膚マスト細胞および末梢血好塩基球を活性化し、ヒスタミン等のじんましん形成に必要な分子の放出が起こることがわかった。

今後、より詳細な血液凝固反応、補体系とマスト細胞・好塩基球の関係解明を進めると共に、それらの反応を抑制する物質が、慢性じんましんの治療薬になり得ることを検証し、さらなる慢性じんましん発症機序の解明と、より効果的な治療薬の探索につなげる、と研究グループは述べている。

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