厚生労働省の「がん全ゲノム解析等連絡調整会議」は25日に初会合を開き、日本人の癌全ゲノム解析から研究や創薬に広く活用していく全ゲノムデータベースの構築に向けた議論を開始した。全ゲノム解析のデータ収集・解析方法など、創薬の産業利用を進めるために必要な事項を今年度をメドに取りまとめ、「がんに関する全ゲノム解析等の推進に関する部会」に報告する。報告内容は全ゲノム解析を推進する国の施策に生かす。
癌の全ゲノム解析は、一人ひとりの治療精度を向上させ、治療法のない患者に新たな治療を提供するなど個別化医療への貢献が期待されている。厚労省は昨年12月、ヒトの遺伝情報を網羅的に解析する全ゲノム解析について、癌と難病領域における数値目標などを示した「全ゲノム解析実行計画」をまとめ公表した。
実行計画に沿った形で、最大3年程度をメドに癌と難病合わせて約9万2000症例の検体を対象とした先行解析に取り組んでいる。本格解析の実施に向け、同会議で体制整備に必要な事項を具体的に検討することにした。
初会合では、厚労省から癌全ゲノム解析を進めるに当たって、▽全ゲノム情報に付随して保管する検体や臨床情報▽効率的・統一的なシークエンスや解析方法▽データを共有・活用するための考え方、インフラ▽倫理面や幅広い利活用を可能とするための患者同意のあり方――の4点の検討事項を提示した。
これらの事項については、新たに設置した「がん全ゲノム体制班」の専門WGとなる「バイオバンクWG」「解析WG」「データ共有WG」「ELSIWG」が検討する。今後開催する調整会議ではそれぞれのWGから検討状況が報告される予定である。
来年3月までに検討結果を取りまとめ、部会に報告する予定。臨床情報の内容・収集方法やデータ共有の管理・運営体制、新薬開発への活用に耐え得る同意取得の統一化など一部の検討事項については、先行して年内に報告するとしている。
なお、第2回会議は来月に開催する。