■重症化予防薬を目指す
北里大学病院は17日、抗寄生虫薬「イベルメクチン」(販売名:ストロメクトール錠)について、新型コロナウイルス感染症に対する医師主導第II相治験を開始すると発表した。軽症から中等症の成人新型コロナウイルス感染症患者240例を組み入れ、来年3月末に完了する予定。比較的開発費用が少なくて済む既存薬の適応追加を目的とした試験であることから、迅速な開発を進める上で医師主導治験の実施を決断した。良好な結果が得られれば、イベルメクチンを製造販売するMSDと連携し、重症化予防の治療薬として実用化を目指す。
医師主導治験では、イベルメクチンによる新型コロナウイルスの増殖抑制効果を指標に、有効性・安全性を検討する。PCR検査で陽性反応が出た発症初期から中等症患者を対象としている。治験には、北里大学病院のほか数施設が参加。イベルメクチン群とプラセボ群を無作為に割り付け、1日1回単回投与する。主要評価項目として「PCR検査で陰性化するまでの期間」を評価する。
北里大大村智記念研究所は、試験管内で新型コロナウイルスの増殖抑制効果を確認し、医師主導治験の準備を開始した。7月には、日本医療研究開発機構(AMED)の事業に北里大病院が実施する医師主導治験が採択され、治験の実施を決断。AMEDからの支援に加え、企業や個人からの募金で試験実施費用を充当する。薬剤の調達についてはMSDの協力を得る。
イベルメクチンは、ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智特別栄誉教授が発見したマクロライド系抗生物質。動物薬として寄生虫駆除に用いられているほか、オンコセルカ症(河川盲目症)やリンパ系フィラリア症など寄生虫感染症薬としてアフリカや中南米で使用されている。
様々なウイルスに抗ウイルス活性を持つことが知られ、新型コロナウイルスに対する効果が期待される国産医薬品の一つとなっている。5月には、安倍晋三前首相が「臨床研究や治験で有効性が示されれば早期承認を目指す」との意向を示していた。
北里研究所では、新型コロナウイルス感染症治療薬を早期に発見するため、3月に「COVID-19対策北里プロジェクト」を始動しており、イベルメクチンの治験もその一環。他にも国内外で承認されている抗ウイルス薬の大規模スクリーニングを通じて、治療薬を探索している。
また、北里大東洋医学総合研究所が手がける「漢方プロジェクト」では、新型コロナウイルスに対するステージごとの漢方治療案を示し、治療案に基づく診療データの収集から漢方診療の有用性を検証する活動も進める。