高岡市内の小学校に通う1,721人を調査した結果、運動不足の子どもは27.7%
富山大学は9月15日、富山県教育委員会との連携事業として実施された文部科学省スーパー食育スクール事業の追加調査を行った結果、子どもの運動不足に関する新たな知見が得られたと発表した。これは、同大学術研究部教育学系の澤 聡美講師、同・関根道和教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Environmental Health and Preventive Medicine」に掲載されている。
画像はリリースより
今回の調査では、高岡市内の5つの小学校に通う1年生~6年生までの全児童2,129人を対象として、2016年1月に家庭の社会経済環境、親子の生活習慣などに関するアンケート調査を実施した。回収数は1,987人(回収率:93.3%)、1,721人を分析対象とした。
運動習慣は「運動の実施頻度」について、「たいへんよくする」「よくする」「あまりしない」「しない」の4段階で評価し、「あまりしない」「しない」と評価した子どもを、「運動不足」とした。なお、この質問による運動習慣は、腕時計型活動記録計による消費カロリーの推計値と相関することを、研究グループの過去の研究で確認されたもの。今回の調査で、運動不足と判断された子どもは27.7%だった。
仲のよい友達がいないなど社会環境の問題だけでなく、家庭環境も大きく影響すると判明
調査の結果、運動不足の子どもの特徴として、(1)仲のよい友達がいない(オッズ比5.40(p<0.001))、(2)2時間以上のメディア利用(オッズ比1.47(p<0.001))、(3)母親の生活習慣が良くない(オッズ比1.54(p<0.05))、(4)親とのコミュニケーションが少ない(オッズ比1.59(p<0.01))、という4つの特徴が明らかになった。
なお、(3)の親の生活習慣は、Breslowの7つの生活習慣で評価した。質問項目は、1. 適切な睡眠時間(7~8時間)をとる、2. 喫煙をしない、3. 適正体重を維持する、4. 過度の飲酒をしない、5. 定期的な運動を行う、6. 朝食を毎朝食べる、7. 間食をしない、の7つの項目からなり、当てはまる項目が多いほど生活習慣が良いと判断される。当てはまる項目が0~3個の場合を生活習慣が「わるい」、4~5個の場合を「ふつう」、6~7個の場合を「よい」として、子どもの運動習慣との関係を評価した。
その結果、親の生活習慣が悪いと、子どもは運動不足の傾向があることがわかった。さらに、親の年齢や性別等の他の要因を考慮した統計分析の結果、父親の生活習慣が「よい」家庭を基準とした「わるい」家庭における、子どもの運動不足に対するオッズ比は、1.28だった。母親の生活習慣が「よい」家庭を基準とした「わるい」家庭における、子どもの運動不足に対するオッズ比は1.54(p<0.05)だった。
子どもの望ましい生活習慣づくりには親への健康教育も重要
今回の研究成果により、子どもの望ましい運動習慣づくりには「社会環境の要素」「家庭環境の要素」「子ども自身の生活習慣の要素」という3つの要素があることがわかった。要素の中には、社会環境のような自分自身の力だけでは見直しが難しいものと、親の生活習慣や子どもの生活習慣のように、見直しが可能なものがある。
これに対して研究グループは、「子どもの望ましい生活習慣づくりには、子どもに対する健康教育だけではなく、親に対する健康教育も必要であり、地域社会や学校の協力の下に、子どもの健康習慣づくりを進める必要がある」と、述べている。
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