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大学生活でメンタル不調に陥りやすい学生の特性が明らかに-金沢大

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2020年09月14日 PM12:00

大学生活に適応できず、学生相談室などの窓口を訪れる学生の特性は?

金沢大学は9月10日 、大学生活でメンタル不調に陥りやすい学生の特性を明らかにしたと発表した。この研究は、同大保健管理センターの吉川弘明教授、足立由美准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米国科学誌「PLOS ONE」に掲載されている。


画像はリリースより

青年期におけるメンタルヘルスは、非常に重要だ。メンタル不調に陥ると、最悪の場合、自殺という結果になることもある。大学ではメンタルヘルスの課題に対応する場所として、学生相談室などの窓口を設置し、公認心理師が学生の心の問題に対応し、必要があればメンタルクリニックなどの外部医療機関や公的支援機関につなげ、学生の学業の成功を支援している。

最近は社会のグローバル化に伴い、さらに高度な能力を持った人材の育成が求められるため、大学も組織や取り組みを変革して対応を急いでいる。学生は英語での授業を受け、アクティブラーニング形式の授業に参加し、海外留学の機会も持つようになった。一方で、そのような変革に適応できない学生も増加している。

大学生活に適応できず、学生相談室などの窓口を訪れる学生の特性を詳細に調査した研究は、これまで多くなかった。

心と体の両面からメンタル不調に陥る特性を科学的に評価

今回の研究では、大学生活でメンタル不調を抱える学生の特性を科学的に評価することを目的に、学生相談室や外部のメンタルクリニックなどの医療機関を利用したことがない学生を対照群にして比較研究を実施。研究は、医学倫理審査委員会の審査・承認後、希望した被験者への説明と同意を得て、個人情報の漏洩が無いよう十分に配慮して行われた。

公認心理師とカウンセリングの機会を持った学生は、37人(女性11人、男性26人)、対照群は68人(女性41人、男性27人)だった。十分な説明と同意のもと、心理検査として、ウェクスラー成人知能検査第3版(WAIS–III)、自閉症スペクトラム指数(AQ)、S-H式レジリエンス検査、新版STAI状態-特性不安検査、健康関連QOL尺度(SF-12)を実施。また、自律神経機能評価のため、指尖脈波の心拍変動スペクトル解析を実施して、交感神経機能と副交感神経機能を評価した。さらに、バイオマーカーとして、血液中の抗グルタミン脱炭酸酵素(GAD)抗体を測定した。抗GAD抗体は、抗神経抗体の一つで、ある種の神経疾患の原因となることが推察されている自己抗体だ。以上により、心と体の両面からメンタル不調に陥る特性を科学的に明らかにすることに取り組んだ。

特に男性でASD傾向が強い、レジリエンスが弱いなどの特徴

研究の結果、メンタル不調により公認心理師とカウンセリングの機会を持った学生群について、「WAIS-IIIの点数は正常範囲だが、対照群の学生よりもワーキングメモリーの指標において、低得点である」「特に男性において、自閉スペクトラム障害の傾向が強い」「レジリエンスが弱い」「性格的に不安特性が高い」「男女ともに、社会生活におけるクオリティーオブライフ(QOL)の満足度が低い」「男性においては、メンタルヘルスにおけるQOLの得点が低い」「自律神経機能では交感神経の緊張が常に高いということに加え、男性と女性では、特性が異なる」ことが明らかになった。

一方、血液中抗GAD抗体は、以前、自閉スペクトラム障害では高値になるという報告があったが、高い値を示す者はほとんどいなかった。以上の結果は、メンタル不調を抱える学生の特性を、初めて科学的に明らかにしたものだという。

メンタルヘルス不調に陥りやすい学生への教育指導の参考に

今回の研究結果について、研究グループは、メンタルヘルス不調に陥りやすい学生に、どのような教育指導をすればよいかの参考になるものだとしている。

吉川教授と足立准教授は、同大が平成19年度文部科学省選定事業として採択され4年間にわたって実施した「新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム(学生支援GP)」の推進に関わり、プログラム終了後も同大の正課教育「共通教育科目自由履修科目」や正課外教育「学生支援プログラム」の中に、その実践から生まれた教育パッケージを導入してきた。「共通教育科目自由履修科目」や「学生支援プログラム」は、メンタルヘルス不調に陥りやすい学生の学習意欲を向上させるための教養教育の在り方の一つだ。

また、学生はいずれ卒業して、社会に出ていくが、その時点で特性が大きく変わっているわけではない。ほとんどのメンタル不調は青年期に始まるとされた報告もあり、企業や社会の中に、この研究が示した特性を持つ人は、一定の割合で存在している。少子高齢化は日本だけではなく、世界的な課題だが、今回の研究で明らかとなった特性を持つ人も生き生きと過ごせるように、職場環境や社会環境、人間関係に配慮しなければならないとしている。

今回の研究結果は、一人一人の特性に配慮しつつ、社会の繁栄を図るための重要な手掛かりを与えると思われる、と研究グループは述べている。

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