阪大職員1万212人の2006〜2018年度定期健康診断データで評価
大阪大学は9月2日、デスクワークの男性はタンパク尿のリスクが高い可能性が明らかになったと発表した。この研究は、同大キャンパライフ健康支援センターの山本陵平准教授および大学院医学系研究科の猪阪善隆教授らの研究グループによるもの。研究成果は、イタリアの科学誌「Journal of Nephrology」に掲載されている。
画像はリリースより
近年増加の一途をたどる透析患者は、2018年末時点で約34万人。透析医療費は全医療費の約4%である1兆6000億円を占める。透析患者数および透析医療費を減少させるためには、タンパク尿と腎機能の低下(糸球体濾過量の低下)で特徴づけられる慢性腎臓病の予防策を確立する必要があり、肥満・喫煙等の改善可能な生活習慣リスクを同定することが重要だ。長時間の座位は、メタボリック症候群、糖尿病、心血管系疾患などの生活習慣病および死亡のリスクであることが知られているが、腎臓に及ぼす影響はこれまで明らかではなかった。
今回研究グループは、2006〜2018年度の大阪大学職員1万212人の定期健康診断データを利用して、デスクワークがタンパク尿の発症に及ぼす影響を評価した。
就業形態が「座位」の男性は、他就業形態よりタンパク尿リスクが1.35倍上昇
研究の結果、初回健診受診時に主な就業形態を「座位」と回答したデスクワークの男性3,449人では、中央値4.8年の追跡期間において、452人(13.1%)がタンパク尿(尿タンパク≧1+)を発症した。
一方、「立位」「歩行」「物を運ぶ」あるいは「重労働」と回答した男性1,538人のうち145人(9.4%)がタンパク尿を発症。多変量解析の結果、「座位」のタンパク尿のリスクが、それ以外の就業形態の男性よりも1.35倍(95%信頼区間1.11–1.63)上昇していることが明らかになった。なお、女性において、座位とタンパク尿の関連は認められなかった。
デスクワーク時間短縮で、腎臓病の予防や透析患者数抑制に期待
今回の研究成果により、デスクワークが腎臓病のリスクとなる可能性が高いことが明らかになった。デスクワーク時間の短縮が、腎臓病を予防し、増加の一途を辿る透析患者数の抑制につながることが期待される。デスクワークの合間に定期的に軽い運動を行い、長時間のデスクワークを避けることが、腎臓病の予防につながることが期待されるという。
また、研究グループは、今回の研究で明らかになったデスクワークとタンパク尿との関連性について、今後は他職種など対象を広げて調査し、さらに検証をしていく必要があると述べている。
▼関連リンク
・大阪大学 研究情報