人に会う頻度、緑茶を飲む習慣は、歯の健康と関連があるか
東北大学は9月2日、高齢者の緑茶摂取と歯の本数、ソーシャルネットワーク(交友など)の多寡に関する調査を行い、緑茶を1日に4杯以上飲む高齢者は、緑茶を飲まない高齢者よりも約1.6本歯が多く残っていることが明らかになったと発表した。これは、同大大学院歯学研究科歯学イノベーションリエゾンセンター地域展開部門の相田潤教授、国際歯科保健学分野の星真奈実氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Environmental Research and Public Health」に掲載されている。
画像はリリースより
緑茶にはカテキンやフッ化物(フッ素)が含まれるため、むし歯や歯周病を予防して歯の喪失を減らす可能性があることが報告されている。また、ソーシャルネットワークが豊かな人ほど、健康情報を得やすいことなどがあり、歯を失うリスクが低くなる可能性が報告されている。日本では、誰かに会う時に緑茶を飲むことが多いが、緑茶の摂取と歯の本数の関連についてソーシャルネットワークを考慮した報告はない。そこで研究グループは、高齢者2万4,147人を対象に、「緑茶を摂取しているほど、歯が多い」という関連が、「ソーシャルネットワークの多寡により異なるか」を検討した。
友人・知人によく会い、緑茶を飲む頻度が高い高齢者は歯の本数が多い
研究では、日本老年学的評価研究プロジェクト(the Japan Gerontological Evaluation Study Project)の2016年横断調査データを分析した。日本で要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者に自記式調査票を郵送し(回収率69.9%)、本解析で用いた質問に対して24,147人から回答を得た。緑茶の摂取頻度は、ほとんど飲まない・約1杯/日・2-3杯/日・4杯以上/日の4区分とした。また、1か月に会う友人・知人の数(ソーシャルネットワークサイズ)は、0人・1-2人・3-5人・6-9人・10人以上の5区分とした。性、年齢、喫煙歴、教育歴、糖尿病の既往歴、等価所得、歯磨き頻度、おやつの頻度、1人暮らしかどうかを考慮。解析には重回帰分析を用い、緑茶の摂取頻度と、1か月に会う友人・知人の数の区分が上がるにつれ歯が何本増えるかを算出した。
対象者の平均年齢は74.2歳(SD=6.3)、45.9%が男性。現在歯数は20本以上の人が52.2%、緑茶を2-3杯/日飲むと答えた人が34.2%、1か月に10人以上の友人・知人に会う人が32.6%だった。
重回帰分析の結果、緑茶の摂取頻度と1か月に会う友人・知人の数は、ともに歯の本数が多いことに有意に関連していることがわかった。具体的には、1か月10人以上の友人に会う高齢者は、友人に会わない高齢者に比べ、約2.6本多く歯が残っていた。また、緑茶を1日に4杯以上飲む高齢者は、緑茶を飲まない高齢者に比べ、約1.6本多く歯が残っていた。特に1か月に会う友人・知人の数が少ないほど、緑茶と現在歯数の関連が強い傾向であった(交互作用項p<0.05)。
緑茶を飲む頻度が高いことと、現在歯数が多いことの間に有意な関連が認められ、特に1か月に会う友人・知人の数が少ない高齢者において顕著だった。「緑茶によるう蝕や歯周病予防効果について、ソーシャルネットワークを考慮した上で人を対象として大規模に検証したのは本研究が初めて。新型コロナウイルスの感染拡大で友人・知人に会う機会が減っている今、緑茶の効果が期待できるかもしれない」と、研究グループは述べている。
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