4月に就任した日本医療研究開発機構(AMED)の三島良直理事長は8月28日に記者会見し、新型コロナウイルス感染症への対応を強化していく方針を打ち出した。三島氏は、2012年から6年間、東京工業大学の学長を務めた経験をもとに「健康・医療分野での国際競争力の向上を目指したい」と強調。新型コロナウイルス感染症の治療薬・ワクチン開発を優先的に支援する考えを明らかにした。
AMEDは、今年度から第2期の中長期計画を始動したが、8月に一部を改正し、新型コロナウイルス感染症対策を盛り込んだ。三島氏は、「補正予算や調整費などを用いて、診断法や治療法、ワクチン開発に迅速かつ着実に取り組んでいきたい」と語った。
現在、政府による新型コロナウイルス感染症の研究開発関連支援のうちAMED経費として約1130億円が投入されている。さらに8月26日には、政府の健康・医療戦略本部により、AMEDの理事長裁量型経費が認められ、総額95億5000万円を新たに配分することが決まった。
新型コロナウイルス感染症対策のための研究開発推進を目的に36億7000万円を配分する。治療薬の早期実用化のためにバイオセーフティレベル3で治療薬候補を評価できる体制などの構築に向け10億円、スーパーコンピューター「富岳」の計算結果を活用した治療薬探索・評価基盤の整備に1億5000万円を投じる計画だ。
三島氏は、今回配分された調整費の使い道について、「先を見据えた研究開発にも資するような支援をしていきたい」と述べ、AIの導入や新たな生活様式にも対応した研究開発を支援していく考えを示した。
そのほか、医薬品や医療機器・ヘルスケア、再生・細胞医療など新たな治療手段(モダリティ)を軸としたプロジェクトの研究開発推進に45億8000万円を充てることも公表した。