米FDAは米国時間の23日、新型コロナウイルス感染症の治療で回復期血漿療法の緊急使用を許可した。回復期血漿療法は、新型コロナウイルスから回復した患者の血漿を用いて治療する方法で、今後、新型コロナウイルス感染症の入院患者に対して治療が可能になる。
新型コロナウイルス感染症から回復した患者の血漿には、新型コロナウイルスに対する抗体が含まれており、患者に投与すると免疫系の活性を高め、回復につながる可能性がある。米研究機関が回復患者から血漿を集めて臨床試験を実施し、既に7万人以上に対する投与実績がある。
これまでに投与した患者データの一部を解析した結果、血漿の投与によって死亡率が低下するなどの有効性が示されたという。FDAは、重症度の軽減や治療期間の短縮に効果的とし、副作用などの潜在的なリスクを上回ると判断。緊急使用を認めた。
血漿療法の使用に当たっては、アレルギー反応や輸血に伴う感染症などの副作用が考えられるため、ファクトシートに基づいて投与を行うよう求めている。
緊急使用許可は、通常の医薬品承認とは異なり、特例として患者に未承認医薬品の使用を認める措置。正式な承認には、現在実施中の臨床試験で有効性・安全性を示す必要がある。新型コロナウイルス感染症治療薬では米ギリアド・サイエンシズが開発中の抗ウイルス薬「レムデシビル」が緊急使用許可を受けている。
回復患者の血漿を用いた治療法開発をめぐっては、米国国立衛生研究所国立アレルギー・感染症研究所の協力を得て、血漿分画製剤の開発に関わる10社が参画するアライアンスが設立されている。参加企業には武田薬品やCSLベーリングをはじめ、バイオテスト、英BPL、仏LFB、スイスのオクタファーマなどが名を連ねており、回復患者の血漿採取や臨床試験で協力している。