コロナ性肺炎の重症化に炎症性サイトカインIL-6が関与、その仕組みは?
大阪大学は8月24日、新型コロナウイルス感染により早期にIL-6が血中に増加し、このIL-6が血管から血液凝固を促進する分子 Plasminogen Activator Inhibitor-1(PAI-1)を放出させることを発見したと発表した。この研究は、同大免疫学フロンティア研究センター(IFReC)免疫機能統御学の姜秀辰(カン・スジン)助教、岸本忠三特任教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
世界中に蔓延する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とそれに起因する肺炎の重症化は人類の健康・福祉にとって克服すべき大きな課題だ。新型コロナウイルス感染性肺炎の重症化には炎症性サイトカインIL-6が関与しており、その機構を解明するのは重要と考えられる。
細菌性敗血症に匹敵のPAI-1レベル、多臓器で血栓ができ液性成分漏出で重症化
今回、研究グループは、新型コロナウイルス感染により早期にIL-6が血中に増加し、このIL-6が血管から血液凝固を促進する分子「PAI-1」を放出させることを発見した。PAI-1は、血管内皮細胞や肝臓、血小板などに存在し、血管内皮障害や血小板の崩壊により血中に放出される。血中で高い値を示す場合、血栓の溶解を阻害し血栓の成長を促進する危険因子となる。
COVID-19患者のPAI-1レベルは、細菌性敗血症または重症熱傷の患者に匹敵する高さだった。このことが、肺をはじめとする多くの臓器で血栓を作らせ、血管から液性成分を漏出させ、炎症の重症化につながる。この事実は実験室系(In vitro)で血管内皮細胞をIL-6で刺激するとPAI-1が誘導されることで確認された。また、この現象はIL-6の働きをブロックする抗体医薬品トシリズマブ(製品名:アクテムラ(R))により抑えられた。今回の成果から、研究グループは、「新型コロナウイルス感染においてはIL-6が上昇する早期にアクテムラによってPAI-1の産生を抑えることが有効な治療になると予測される」と、述べている。
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