新型コロナの影響によるネット利用増などで、ネット依存外来への問い合わせが約10倍増
KDDI株式会社は8月25日、東京医科歯科大学のネット依存外来の患者に対する実態調査を通じて、「スマホ依存」の調査と解明を行う共同研究を、同日から開始したと発表した。この研究は、同社、株式会社KDDI総合研究所、東京医科歯科大学の研究グループによるもの。
画像はリリースより
KDDIは、「KDDI Sustainable Action」の「心をつなぐ~安心で豊かなデジタル社会構築~」に基づき、「KDDIスマホ・ケータイ安全教室」などの啓発活動に取り組んでいる。また、KDDI総合研究所は、近年の青少年のスマートフォン・インターネットの利用が長時間化する傾向も踏まえ、2016年度からスマートフォンの使い過ぎによる影響の調査・研究を行っている。さらに、KDDIとKDDI総合研究所は「スマホ依存」に関する調査・研究を加速させるため、2020年7月に脳神経科学やAIを活用した「スマホ依存」に関する共同研究も開始した。
東京医科歯科大学は、ネット依存の専門外来を2019年度に立ち上げ、ゲーム障害の患者を中心に入院治療、外来治療、当事者プログラム、家族支援プログラムなど、ネット依存の診療に取り組んでいる。また最近では、新型コロナウイルス感染症の影響によるスマートフォンやインターネットの利用増加などで、ネット依存外来への問い合わせも新型コロナウイルス感染症の流行前と比べ10倍近くに増加しており、診療体制を拡充させている。
ネット利用実態などの情報を医師と共有、病態解明、治療効果の検証に活かすことを目指す
KDDIとKDDI総合研究所は、「スマホ依存」の実態解明や発生メカニズムなど、「スマホ依存」の理解を深めるためには、健常者を中心とした大規模の調査だけでなく、「スマホ依存」の問題で困っている患者に対して直接、スマートフォンの利用状況を調査する必要があると考えており、あわせて患者の診断治療を行っている医療機関と連携することについて検討していた。
東京医科歯科大学では、ネット依存の診断および治療のために必要な生活の記録やスマートフォンの利用状況などを患者からヒアリングしている。一方で、ヒアリングの内容が患者の主観的な回答によるため、実際の状況を正確にとらえることが難しく、適切な治療や治療効果の評価のためにスマートフォンの利用状況などの客観的で細やかな情報を取得する必要があり、その取得方法について検討していた。
そこで今回、KDDI、KDDI総合研究所、東京医科歯科大学は、それぞれの課題の解決に向けて共同で調査・研究を行うことで合意。研究では、「スマホ依存」の問題で困っている患者のスマートフォンやインターネットの利用実態の解明、利用状況を把握するための客観的な指標のほか、客観的に数値化した情報を医師とも共有することで、病態解明、治療および、治療効果の検証に活かすことを目指す。
また、2021年度以降は、共同研究の成果やデータの分析結果をもとに、「スマホ依存」の改善・予防アプリの開発にも活かすとしている。
スマホ依存に関するアンケートを実施、研究用アプリで利用状況を記録
2020年8月から東京医科歯科大学のネット依存外来を受診する患者のうち、同研究への参加を承諾された患者(数十人程度を予定)に対し、「スマホ依存」に関するアンケートおよび、研究用アプリでの利用状況の記録を行う。
承諾した参加者は、外来の期間(ベースライン)、治療期間(介入期間)、予後(フォローアップ)の期間にわたって、研究用アプリを使用する。また、最後に再度アンケートを実施。アンケートや収集した利用状況の記録(利用ログ)をもとに、アンケートと利用ログとの整合性や、「スマホ依存」の問題で現実に困っている患者の使用パターンを分析し、またその結果を治療や治療改善効果の検証にも活用するとしている。
同研究は東京医科歯科大学のほか、大石クリニック、成城墨岡クリニックなどの複数の医療機関とも協力し、ネット依存外来などの患者に対してスマートフォンの利用に関する調査を進める。
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