武田薬品は24日、OTC医薬品を手がける子会社「武田コンシューマーヘルスケア」(TCHC)の全株式を米投資会社のブラックストーングループに約2420億円で譲渡すると発表した。日本初のビタミンB1製剤で60年以上の歴史を持つ「アリナミン」、総合感冒薬「ベンザ」などのOTC製品群を手放し、癌や消化器疾患など五つの事業領域からなる医療用医薬品に投資を集中させる。TCHCは連結子会社から除外され、従業員約500人が異動。株式譲渡日は来年3月31日を予定する。
TCHCは、武田のOTC医薬品ビジネスを分社化したのに伴い、2017年に事業を開始。昨年度の売上高は前年比5.0%減の609億円で、武田全体の売上の2%に相当する。直近の数年間は減収が続いていた。TCHCの譲渡が成立した場合、約1400億円の株式売却益の発生を見込み、親会社の所有者に帰属する当期利益に対する増益影響は1050億円を想定する。
クリストフ・ウェバー社長は同日の記者会見で、OTC医薬品ビジネスについて「日本の多くの消費者に知られるブランドだが、将来的な成長を検討しなければならない」と強調。集中投資する医療用医薬品とは事業モデルが異なり、優先的に投資できない状況が続いていたとし、「様々なオプションを検討したが、ブラックストーンが将来に必要な投資を行うことができる」との考えを示した。
武田は、シャイアー買収に伴う負債の返済を目的に「ノンコア」と位置づける非重点領域について、100億ドル分の売却を計画しており、国内外でノンコア事業の譲渡を相次いで行ってきた。ウェバー氏は「TCHCの譲渡はシャイアーの買収とは全く関係ない」と述べたが、今回の事業譲渡によって100億ドルの計画を達成できる見込みとなった。
今後、アリナミンなどのブランドは、新会社に移行しても残るが、新会社から「武田」の名前は消える見込み。ただ、武田ではノンコア事業であったものが、ブラックストーンの傘下でコア事業となることにより製品価値最大化が図れるとしている。
ウェバー氏は、TCHCの売却の決定を、「歴史と価値のある会社であることは理解していたが、難しい結論だった」と述べた。