唾液の飛散状況を可視化し、より安全に内視鏡診療が施行できる方法を検証
大阪市立大学は8月21日、内視鏡検査時の直接飛沫を実験により検証し、内視鏡検査時に穴あきのサージカルマスクを被験者に用いることが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染において簡便かつ有用な防護策であることを実証したと発表した。これは、同大大学院医学研究科消化器内科学の丸山紘嗣病院講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Endoscopy」に掲載されている。
画像はリリースより
胃カメラなどによる内視鏡診療を施行することは、医療従事者と被験者にとって新型コロナウイルス感染の危険性が高いと言われている。胃カメラ検査や治療を行う際、エアロゾルや唾液などの飛沫により感染することが報告されているため、より安全な感染対策を模索し実行することが強く求められている。しかし、エアロゾルや直接的な唾液の飛沫がどのくらい発生し、どこまで飛散し環境を汚染するかは不明だ。新型コロナウイルスと共存する時代において、内視鏡診療の永続的な延期は被験者にとって不利益を与えることが予測される。
そこで研究グループは、唾液の飛散状況などを可視化し把握することで、接触や環境汚染の観点から、より安全な内視鏡診療が施行できる方法を検証した。
穴あきサージカルマスク装着が有効、腹部に少量の飛散のみで床への飛散なし
今回の研究では、被験者(マネキン)、胃カメラ、噴霧器、蛍光塗料、穴あきのマスクを用いた。胃カメラの術者と看護師は、帽子、ゴーグル、フェイスシールド、マスク、長袖ガウン、手袋、シューズカバーを着用。模擬咳の発生には、0.4MPaへ設定した噴霧器と蛍光塗料を溶解した液体を用いた。1回の模擬咳として噴霧器を0.5秒間発射した。マネキンに通常通りマウスピースを用いた場合と、マスク中央に10mm大の穴をあけた、穴あきサージカルマスクを装着させた場合で実験を行った。
その結果、通常のマウスピースを用いた場合では、マネキンの口の周りやベッドに蛍光塗料が大量に付着していた。また、胃カメラを扱う医師の前胸部、腹部、右腕、両手、両足にも多量の飛沫が飛散しており、1m30cm離れた床にまで唾液が飛散していた。
それに対し、穴あきのサージカルマスクを装着した場合では、腹部に少量の飛沫が飛散したのみだった。マスク内に多量の唾液を認めたが、床への飛散は認められなかったという。
穴あきマスクの併用で、より簡便で安価な感染対策が可能
今回の研究で、咳嗽などによる唾液の飛散状況を確認することにより、環境汚染なども含めた対策が可能であり、穴あきマスクを併用することで、より簡便で安価な感染対策が可能であることがわかった。
研究グループは、「新型コロナによる第2波が懸念されているが、経済的な状況も踏まえ、検診センターなども第1波のような全面的な休業などは厳しい状況だ。そのため、感染拡大下において、内視鏡診療を再開、継続していくための、より安全で簡便な感染対策が必要となることが予測される」と、述べている。
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