NLRP3にインフラマソームを持続的に形成する変異、炎症発作を起こしやすい希少難病CAPS
愛媛大学は8月17日、インフラマソームが恒常的に活性化して炎症発作が起こる希少難病「クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)」の治療薬候補化合物KN3014を選定したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の金子直恵技術員とプロテオサイエンスセンターの竹田浩之准教授、澤崎達也教授、増本純也教授らの研究グループによるもの。研究成果は、英国科学誌「Scientific Reports」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
細胞内には、病原体の侵入や代謝産物などの細胞にとって危険な物質に反応するセンサーが備わっている。そのようなセンサーのうち、タンパク質NLRP3は、ASC、カスパーゼ-1というタンパク質とインフラマソームという複合体を形成して、炎症を誘導するサイトカインのインターロイキン-1β(IL-1β)を細胞外に放出する。
CAPSは、病原体や危険物質の関与がなくても持続的にインフラマソームを形成する変異がNLRP3にあるため、炎症発作を起こしやすい性質を有する。このような自己炎症疾患は、その多くが難病に指定されている。現在、CAPSに対する治療はIL-1βの機能を抑える高価な抗体医薬などしかないため、廉価な低分子医薬の開発が嘱望されている。
MWS患者培養白血球からのIL-1β産生を抑制
今回、研究グループは、愛媛大学独自のコムギ胚芽無細胞タンパク質合成技術を使って、インフラマソームの形成に重要なNLRP3とASCを無細胞合成。東京大学創薬機構から提供された化合物ライブラリーを用いて、NLRP3とASCの結合を阻害する低分子化合物のハイスループットスクリーニング(HTS)を行った。その結果、インフラマソーム形成を阻害する低分子化合物KN3014を選定した。
KN3014は、CAPSのひとつで、NLRP3とASCの結合が持続してインフラマソームが活性化していると考えられているマックルウェルズ症候群(MWS)患者の培養白血球からのIL-1β産生を抑えたという。また、KN3014は、実験した範囲の濃度で細胞に傷害を与えなかったとしている。
インフラマソーム関与の炎症疾患や生活習慣病治療薬への応用に期待
今回の研究成果により、KN3014の基本骨格がCAPSの治療薬候補になりうること、KN3014がCAPSだけでなく、NLRP3インフラマソームが関与する炎症疾患や生活習慣病などの治療薬候補になりうることなどが示された。研究グループは、CAPSの治療薬の開発だけでなく、インフラマソームが関与する多くの炎症疾患や生活習慣病の治療薬への応用が期待される、と述べている。
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