富山県内の小学生を対象にインターネット利用の実態を調査
富山大学は8月11日、富山県内の小学生を対象にインターネット(以下、ネット)利用について調査し、ネット依存とオンライン危険行動における新たな知見について発表した。これは、同大地域連携推進機構地域医療保健支援部門の山田正明助教、関根道和教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Epidemiology」に掲載されている。
画像はリリースより
今回の研究は、富山県教育委員会が実施した「とやま安心ネット・ワークショップ事業」の一環として2018年7~9月に富山県内の小学4~6年生13,092人を対象として行った調査を分析したもの。全体の回収率は94.2%、最終分析数は12,130人(90.4%)だった。ネットの利用時間やYoungによるネット依存尺度(YDQ)に加え、課金や動画投稿、人間関係のトラブル、知らない人と会った経験など、オンライン上の危険行動を調査した。
ネット利用4時間以上で危険行動が高率に
その結果、ネット依存は全体で4.2%(男子5.2%、女子3.2%)。危険行動については課金の経験が21.6%(男子31.3%、女子11.5%)、動画投稿は6.6%(男子6.6%、女子6.6%)、けんかなどの人間関係のトラブルは5.2%(男子7.0%、女子3.1%)、ネット上で知り合った知らない人と会った経験は2.4%(男子3.5%、女子1.4%)だった。ネットでの課金は、小学生(特に男子)でも一般的な行動となっている可能性がある。また、危険行動の割合から、40人学級の場合、ネット依存の状態である児童は平均で2人程度、知らない人と会った経験のある児童は1人程度存在することになる。
次に、平日のネット利用時間とのネット依存、危険行動との関係を調査した。ネット依存は、利用時間が4時間未満の群に比べて、4時間以上の群で17.6%と非常に高率だった。危険行動では、課金や動画投稿、人間関係のトラブルは2時間以上の群で高率だった。このことから、ネット依存の予防には利用時間を2~3時間未満にすること、危険行動の予防は、利用時間だけではなく、使用方法に関する啓発が重要だと言える。
親が家庭でのルールを作る、親子の会話を増やすことがネット依存予防に
最後に、ネット依存と生活習慣、家庭環境との関連について、ポワソン回帰分析を用いた分析を行った。これにより有病割合比(PR)を算出し、高い値(割合比)は強い関連を意味する。分析の結果、ネット依存に対しては、ネット利用時間と運動不足、遅い就寝時間といった児童自身の生活習慣と強い関連を示したが、それらの要因を調整しても、「現実社会で友人がいない」「家庭でのルールがない」「親子の会話がない」といった項目も関連を示した。言い換えると、親が家庭でルールを作る、親子の会話を増やす、子どもが友人を作れるような環境(習いものや親子で参加する講座など)をつくることが、ネット依存への予防法だと考えられるという。
今回、小学生においてもネット依存や危険行動は稀ではないことがわかった。「コロナ禍の影響もあり、ネットは欠かせないものとなっているが、今一度、家庭内で使用時間や使用方法について、子どもと話し合う必要がある」と、研究グループは述べている。
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