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レーザー照射による骨切削はバー切削よりも炎症しにくいことを証明-東京医歯大ほか

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2020年08月14日 PM01:15

硬/軟組織の切削に優れるEr:YAGレーザー、新生骨形成への影響は?

東京医科歯科大学は8月12日、Er:YAGレーザー照射が骨形成抑制因子であるスクレロスチンを抑制することを証明したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科歯周病分野の大杉勇人医員、片桐さやか講師、岩田隆紀主任教授、青木章担当教授の研究グループが、同大難治疾患研究所エピジェネティクス分野の北澤萌恵助教、松沢歩助教、東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター分子遺伝学研究部の廣田朝光講師、明海大学歯学部機能保存回復学講座保存治療学分野の横瀬敏志教授、門倉弘志講師との共同研究として行ったもの。研究成果は、「The FASEB Journal」のオンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

骨細胞から分泌されるスクレロスチン(遺伝子名:)は古典的Wntシグナル伝達経路の細胞外抑制因子として知られている、スクレロスチンを阻害することで、、骨量および骨強度の増加をもたらし、スクレロスチンを阻害する抗スクレロスチン抗体は、骨粗鬆症治療薬へも応用され注目されている。

レーザーは人工的につくられた光で、日常生活に幅広く応用されており、医療にも用いられている。今回の研究で使用されたEr:YAGレーザーは、水への吸収が強く、発熱が少ないので、硬組織・軟組織の切削に優れている。歯科治療においても虫歯治療や歯周治療、インプラント治療に用いられ、治療の有効性についても報告されている。研究グループは、レーザー照射による骨切削は従来の機械的切削と比較して新生骨形成に優れていることを報告してきたが、そのメカニズムはいまだ不明だった。

レーザー照射はスクレロスチンを減少させ、新生骨形成に有利な可能性

今回、研究グループは、骨切削後の遺伝子変化について評価するため、ラットの頭頂骨に対してレーザー照射による骨切削とスチールバーを用いた機械的骨切削を行った。処置後6、24、72時間で切削骨を採取し、DNAマイクロアレイ法を用いて遺伝子発現の網羅的かつ経時的な解析を行った。結果、6時間後のレーザー切削骨とバー切削骨において発現変動遺伝子を10個検出。その中でレーザー切削骨ではSostの発現が減少していることが示され、Sostの減少をqPCR法で検証した。また、免疫組織化学染色においてもバー切削骨よりもレーザー照射骨でスクレロスチンの発現が低いことを観察した。切削後24時間では、レーザー切削と比較してバー切削において炎症関連の遺伝子群が上昇することを確認した。

次に、骨細胞様細胞に対してEr:YAGレーザー照射を実施。結果、照射6時間後ではレーザー照射群においてSostの抑制効果が示された。照射24時間後の細胞培養上清からもELISA法を用いてスクレロスチンの発現が減少していることを見出した。

以上より、レーザー照射による骨切削はバー切削よりも炎症が生じにくいことが証明された。またレーザー照射により骨組織、骨細胞様細胞において骨形成抑制因子であるスクレロスチンが減少することも判明したことから、Er:YAGレーザー照射は骨組織内の骨細胞を刺激しスクレロスチンを減少させて、新生骨形成に有利な反応を引き起こす可能性が示唆された。今後、骨疾患へのレーザー治療の応用が期待される。

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