眼科用VEGF阻害剤に新たな選択肢
ノバルティス ファーマ株式会社は7月30日、眼科用血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬「ベオビュ(R)硝子体内注射用キット120mg/mL」(一般名:ブロルシズマブ、以下ベオビュ)の発売を記念し、「加齢黄斑変性治療の課題と新たな選択肢」と題したウェブメディアセミナーを開催。東京女子医科大学医学部眼科教授の飯田知弘氏が講演した。
東京女子医科大学医学部眼科教授 飯田知弘氏
加齢黄斑変性は、成人の失明や視力低下の主原因のひとつでもある進行性の疾患。かつては欧米人に多い目の病気とされていたが、昨今ではアジア人でも増加傾向にあり、日本においては視覚障害の原因第4位となっている1*。病態によって「萎縮型(Dry型)」と「滲出型(Wet型)」の2種類に大きく分類されるが、日本人は黄斑の下に水がたまる「滲出型」が圧倒的に多いのが特徴だ。
滲出型加齢黄斑変性は、血管内皮増殖因子(VEGF)の過剰産生によって黄斑部に形成促進された新生血管から、血液成分が漏出することで急激な視力低下をきたす。ベオビュは、硝子体内注射で眼内に直接薬剤を投与しVEGFの活性を阻害するVEGF阻害剤。新生血管の形成を抑制し、血液成分の漏出を低減させる。
従来よりも長い投与間隔で効果を維持、患者・介護者の通院負担を軽減
第3相臨床試験であるHAWK試験およびHARRIER試験では、48週時点における最高矯正視力の平均変化量から、ベオビュが、既存薬のアフリベルセプトに比べて非劣性であることが検証された2*, 3*。また、投与開始1年時に改善した視力は、2年時にも維持されたとしている2*, 3*。これらの結果から、ベオビュは、従来よりも長い投与間隔で効果を維持し、患者や介護者の通院や治療における負担を軽減させることが期待される。
最後に飯田氏は加齢黄斑変性治療の今後について、「将来的にはもちろん根治療法が良いと考えるが、まだそれは難しい。国内でも取り組まれている網膜再生医療にも非常に期待しているが、それが現実となる日までは、“早期発見・早期治療”が最も大切。抗VEGF療法を早期に開始し、寛解導入を目指すのがベストだと考える」と、述べた。
(参考文献)
1*.Morizane Y, et al.: Jpn J Ophthalmol.; 63: 26-33. 2019.
2*.Dugel P, et al. HAWK and HARRIER: Phase 3, multicenter, randomized, double-masked trials of brolucizumab for neovascular age-related macular degeneration. Ophthalmology. 2019.
3*.Beovu [summary of product characteristics] Basel, Switzerland. Novartis: 2020.
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・ノバルティス ファーマ株式会社 プレスリリース