日本医療研究開発機構(AMED)は3日、研究開発の加速化などに充てる「2020年度医療分野の研究開発関連調整費」(理事長裁量型経費)の内容を、政府の健康・医療戦略推進専門調査会で公表した。新型コロナウイルス感染症治療薬の開発を目指した効率的な臨床試験体制の整備などを盛り込んだ。内閣官房は、詳細や配分金額を詰めた上で、今月下旬~9月上旬に開催予定の健康・医療戦略推進本部で決定する見通し。
調整費は、既に着手している研究開発に対する内容の充実や前倒しなどの理由により、予算が追加的に必要なものに対してAMEDが配分するもの。
20年度は、▽新型コロナウイルス感染症対策のための研究開発推進▽六つの統合プロジェクトに関連する研究開発推進▽異分野等との横断的・連携的取り組みの推進――に充てることとした。
新型コロナウイルス感染症対策のための研究開発推進に向けては、治療薬の早期実用化を目指し、重症化に至る病態解析や病態機序の解明を行い、これら知見を利用して効果的な臨床試験を実施する体制を整備する。
理化学研究所のスーパーコンピューター「富岳」は新型コロナウイルスの治療に有望な複数の既存薬を予測しているが、この計算結果を確認する必要がある。そこで、効率的に薬効発現の作用メカニズムを明らかにするため、ウイルスの蛋白質と治療薬候補となった化合物の結合の強さをインビトロで評価する基盤も整備する。
六つの統合プロジェクトに関連する研究開発推進では、予測可能な部位における変異の発生が極めて低頻度である新規ゲノム編集技術について、難病のゲノム解析で構築した知見を組み合わせ、難病に対する新たな治療法の早期提供につなげるとした。
難治性神経疾患の治療に応用できる新規の人工核酸に関しては、安全性・有効性を確認するため、安全性試験や動物実験を前倒しで行う。
異分野等との横断的・連携的取り組みの推進に向けては、品質と安全性に関する評価法が未整備であるRNA製品について、製造現場と連携して評価法を確立し、画期的新薬の開発基盤を構築する。