サーキット運動が認知機能と気分に及ぼす即時効果を検証
東北大学は8月5日、女性を対象に無作為比較対照試験を用いてサーキット運動の即時的な効果検証を行い、1回30分のサーキット運動を実施したグループは、何もしないで30分待機していたグループと比較して、認知力(抑制能力)とポジティブ気分(活力)が即時的に向上することが明らかになったと発表した。これは同大加齢医学研究所の野内類准教授と川島隆太教授らと、株式会社カーブスジャパンとの共同研究によるもの。研究成果は、「Frontiers in Aging Neuroscience」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
運動は、認知機能(記憶力や処理速度や抑制能力など)や気分を向上させることが知られている。これまでに研究グループは、有酸素運動と筋力トレーニングなどを実施するサーキット運動トレーニングを4週間実施するだけで、高齢者の認知機能が向上することを明らかにしてきた。さらに、運動は、1回実施するだけでも認知機能や気分が、一時的に向上するという運動の即時効果も報告されている。しかし、従来の運動の即時効果を調べた研究は、ウォーキングなどを通じた有酸素運動の即時効果を中心に研究しており、サーキット運動の即時効果については、ほとんど研究が行われていない。そこで、今回の研究では、1回30分のサーキット運動が認知機能と気分に及ぼす即時効果を、無作為比較対照試験を用いて検証した。
有酸素運動と筋力トレーニングを30秒ごとに交互に実施、合計30分間実施で即時効果
精神疾患、脳疾患、高血圧の既往歴のない健康な中年女性32人と高齢女性32人を、有酸素運動・筋力トレーニング・ストレッチを実施する「サーキット運動群(中年者16人、高齢者16人)」と、何もしないで待機する「対照群(中年者16人・高齢者16人)」に分け、無作為比較対照試験を実施。サーキット運動群は、ステップボード上で実施する有酸素運動と油圧式マシーンを用いた筋力トレーニングと全身のストレッチを行った。有酸素運動と筋力トレーニングは、30秒ごとに交互に実施する方法を用い、合計で30分間運動した。一方で対照群は、30分の間何もしないで待機した。両群ともに、1回30分の介入の前後に認知機能検査や感情状態を聞く心理アンケートを実施し、介入による変化を計測した。
サーキット運動群と対照群の認知機能検査と心理アンケートの変化量を比較し、サーキット運動の即時効果を調べたところ、サーキット運動群の方が対照群よりも、認知力(抑制能力(検査名:ストループ))、活力気分(検査名:活気-活力尺度(検査名:POMS-II))が向上することが明らかになった。
今回の結果より、1回30分のサーキット運動を実施するだけで、抑制機能や活力が即時的に向上することが明らかになった。「今回のサーキット運動は、中程度の運動負荷(最大心拍の約70%)であることから、中高年者でも取り組みやすく、運動習慣のない人が運動を始めるきっかけや運動を継続するモチベーションが高まることが期待できる」と、研究グループは述べている。
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