一般の小児を対象にした成育コホートデータで、アレルギーの状況を分析
国立成育医療研究センターは8月5日、同施設で2003年から一般の小児を対象として行ってきた成育コホート(出生コホート研究)から、どのくらいの子どもにアレルギーがあるのかを分析した結果、5歳から9歳で鼻炎症状を有する子どもが3倍に増加することがわかり、また、9歳時にはアレルギー検査陽性者が約75%にもなることが明らかになったと発表した。この研究は、同センターアレルギーセンターの大矢幸弘氏、山本貴和子氏、羊利敏氏の研究グループによるもの。研究成果は、「World Allergy Organization Journal」「Allergology International」「Pediatric Allergy and Immunology」に掲載されている。
画像はリリースより
成育コホートでは、2003年から2005年に妊娠した母親を登録し、現在も母親と誕生した子どもを妊娠中から継続的に追跡し、アンケート調査、診察、血液検査により、喘息などのアレルギー性疾患や症状、IgE抗体価などを調査している。これは、病院を受診した子どもを調査したのではなく、同センターで出産した一般集団の子どもを追跡し、過去・将来にわたって追跡調査した縦断的研究(前向きコホート研究)で、過去にさかのぼって情報をあつめて比較する後ろ向きコホート研究や、現時点のみを調べる横断研究よりエビデンス・レベルの高い疫学調査だ。今回の研究では、同センターで出産予定の妊婦(1,701人)と、生まれた子ども(1,550人)のデータを使用・分析した。
5歳から9歳で鼻炎が3倍、9歳でIgE抗体陽性は75%
分析の結果、アレルギー検査でIgE抗体が陽性だった子どもは5歳時から9歳時にかけて増加傾向で、9歳時の約75%が何らかのアレルゲンに対してIgE抗体陽性だった。54.3%が抗ダニIgE抗体陽性、57.8%が抗スギIgE抗体陽性で、半分以上の子どもでダニやスギに対してIgE抗体が陽性であることが判明した。また、鼻炎症状を有する子どもも5歳から9歳で3倍に増加しており、9歳時には約30%の子どもが鼻炎症状を有することが明らかになった。
日本では小児アレルギー疾患の急増が問題になっているが、この結果から、5歳から9歳での鼻炎症状の増加が明らかとなった。また、何らかのアレルゲンに対してIgE抗体陽性の9歳時の子どもが約75%もいることからアレルギー体質を持つ子どもが非常に多いことが判明した。
アトピー性皮膚炎の経過は4タイプ、ぜん鳴の経過は5タイプ
小児アトピー性皮膚炎の経過には4つのタイプ(なし・ほとんどなし62.7%、乳幼児期のみ17.6%、遅発9.5%、乳児期発症持続10.1%)があることが判明。同じアトピー性皮膚炎の診断でも子どもによって経過が異なることが明らかとなった。
ぜんそく症状であるぜん鳴の経過には5つのタイプ(ぜんそくなし43.7%、乳児期早期のみ32.2%、学童期発症6.2%、幼児期発症後改善8.6%、乳児期発症持続9.2%)があることが明らかにった。アレルギー症状の経過は一様ではなく、個別対応が必要であることが示唆された。
研究グループは、「アトピー性皮膚炎やぜん鳴も、子どもによって経過がさまざま。乳児期のアトピー性皮膚炎が必ずしもその後良くなるわけではない。子どもの症状や、今回の研究で明らかになった経過のタイプに合わせたベストな治療が必要だ」と、述べている。
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・国立成育医療研究センター プレスリリース