「OncoBEAM RAS CRC キット」を用いた、血液を対象とする大腸がんRAS遺伝子変異検査
シスメックス株式会社は8月3日、RAS遺伝子変異検出キット「OncoBEAM(TM) RAS CRC キット」を用いた、血液を対象とする大腸がんRAS遺伝子変異検査が8月1日から保険適用されたと発表した。
現在、大腸がんの初回治療開始時に薬物療法の対象となる患者に対して、腫瘍組織を用いたRAS遺伝子変異検査が行われ、抗EGFR抗体薬の投与判断がなされる。また、抗EGFR抗体薬による治療後に大腸がんを再発した患者に対する治療法の1つとして抗EGFR抗体薬の再投与が有効であること、再投与時点においては初回治療時点からRAS遺伝子変異状態が変化している可能性があることが複数の研究で報告されている。
日本臨床腫瘍学会のガイダンスでは、再発時の遺伝子変異状態に基づく適切な投与判断のためには、経時的に複数回遺伝子変異状態を調べることが望ましいと記載。そのため、生検が難しい場合でも、複数回の検体採取が可能な血液を対象としてRAS遺伝子変異状態を調べることができるリキッドバイオプシー検査の実用化が期待されていた。
必要なタイミングでのRAS遺伝子変異検査実施が可能に、抗EGFR抗体薬投与の最適化に期待
OncoBEAM RAS CRCキットは、大腸がん患者の血液を検体として、血液中に遊離した腫瘍由来DNA(血中循環腫瘍DNA(ctDNA))を対象に、BEAMing技術を用いてRAS遺伝子変異を高感度(検出された変異の約30%で変異アレル頻度が1%未満)に検出するという。抗EGFR抗体薬でのセツキシマブ(遺伝子組換え)またはパニツムマブ(遺伝子組換え)の大腸がん患者への適応を判定するための補助情報を提供する、国内初の高感度デジタルPCR法を用いた大腸がんリキッドバイオプシー検査として、2019年7月に体外診断用医薬品に承認され、2020年8月1日から保険適用された。なお、同製品を用いた保険診療としての受託検査は2020年8月に開始を予定している。
腫瘍組織の一部を採取して行う生体検査(生検)が難しい場合でも、血液を検体として用いるため、患者の身体的・精神的負担が少なく、かつ必要なタイミングでRAS遺伝子変異検査を実施することが可能となり、抗EGFR抗体薬投与の最適化が期待される。
一方で、ctDNAが血液中に十分に漏出していない患者では、腫瘍組織にRAS遺伝子変異が存在しても同検査で野生型と判定される可能性がある。特に肺転移のみを有する患者では、可能な限り腫瘍組織を用いた検査を優先させる必要がある、としている。
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・シスメックス株式会社 ニュースリリース