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日本人アルポート症候群、遺伝子型の種類でRAS系阻害薬の有効性が異なる-神戸大ほか

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2020年08月03日 AM11:45

X連鎖が多い遺伝性腎疾患、COL4A5遺伝子にナンセンス変異は重症型

神戸大学は7月27日、日本人患者におけるアルポート症候群の臨床的特徴に関する大規模な解析を行い、既存の治療法であるACE阻害薬やアンギオテンシン受容体拮抗薬(RAS系阻害薬)はアルポート症候群責任遺伝子(COL4A5)の遺伝子変異の種類により、その有効性が異なることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科内科系講座小児科学分野の山村智彦助教、飯島一誠教授、野津寛大特命教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Kidney International」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

アルポート症候群は常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)に次いで2番目に発症頻度の高い遺伝性腎疾患で、海外からは発症頻度は5,000人から1万人に1人と報告されている。しばしば腎不全へと進行する腎症、難聴、眼合併症を特徴とし、その遺伝形式にはX染色体連鎖型、常染色体優性、常染色体劣性の3つの遺伝様式があるが、約80%がX染色体連鎖型だ。

X染色体連鎖型アルポート症候群は、4型コラーゲンα5鎖をコードするCOL4A5遺伝子に病的変異を有した場合に発症する。男性患者で特に重症化しやすく、約90%が40歳までに末期腎不全へと進行し、透析や腎臓移植などの腎代替療法が必要になるが、これまで疾患特異的治療法は存在していない。男性患者においてはCOL4A5遺伝子にナンセンス変異等の重症型の変異を有する場合、ミスセンス変異などの軽症型の変異を有する場合に比較し、10年以上腎不全進行が早いことが知られてきた。ACE阻害薬やアンギオテンシン受容体拮抗薬(RAS系阻害薬)による腎保護作用を期待した治療が唯一の治療だが、これまでの海外からの報告において、尿タンパク質減少効果や、腎機能悪化の進行を抑制する可能性が示されてきた。

男性患者を大規模調査、遺伝子型と末期腎不全進行年齢中央値に強い相関

研究グループはこれまでに、アルポート症候群患者に対する網羅的遺伝子診断体制を確立し、日本人患者において遺伝子診断を行ってきた。今回の研究では、X染色体連鎖型アルポート症候群男性患者430人における臨床的特徴を後方視的に検討。その結果、すでに他の研究において報告されている知見も含めて、以下のような知見を得た。

臨床データが揃い解析可能な422人での検討の結果、末期腎不全進行年齢の中央値は35歳だった。遺伝子型と末期腎不全進行年齢中央値には非常に強い相関関係があり、ナンセンス変異を有する場合は18歳、ミスセンス変異を有する場合は40歳と、22歳の差が認められた。難聴を伴う場合と伴わない場合で比較したところ、難聴を伴う場合は末期腎不全進行年齢中央値28歳、伴わない場合は55歳で、難聴を伴う例で明らかに腎症状も重症だった。

重症型患者にもRAS系阻害薬は有効だが、有効性は軽症型に劣る

RAS系阻害薬投与の有無が明らかとなっている患者群計207人で検討を行ったところ、RAS系阻害薬により治療が行われなかった群では中央値28歳で末期腎不全へと至った。一方、治療が行われた群では半数以上が50歳までに末期腎不全へと到達しないことが示され、これらの治療が有効で、中央値の比較で20年以上腎不全進行年齢を遅らせることが可能であることが示された。

さらに遺伝子型により重症型変異と軽症型変異に分類し、その有効性を評価したところ、軽症型変異を有する患者では、RAS系阻害薬による治療が行われなかった群は中央値33歳で末期腎不全に至ったが、治療が行われた群では半数以上が50歳までに末期腎不全へと到達しなかった。一方、重症型変異を有する患者では、RAS系阻害薬による治療が行われなかった群では中央値16歳で末期腎不全へと至ったのに対し、治療が行われた群では28歳で末期腎不全へと至っており、重症型変異患者においても有効ではあったものの、その期間は中央値の比較で12年であり、軽症型変異に比較したところ、その有効性が劣ることが示された。

現在、研究グループは、重症型変異を有する患者を対象とした治療法(エクソンスキッピング療法)の開発を行っており、「今回の研究結果から本治療法の開発への要望はさらに高まると考えられる」と、述べている。

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