2017~2019年度実施の若年性認知症の調査、全国の標準化有病率と有病者数を推計
東京都健康長寿医療センターは7月27日、2017~2019年度に日本医療研究開発機構(AMED)認知症研究開発事業によって実施した若年性認知症の調査において、日本の若年性認知症有病率は18~64歳人口10万人当たり50.9人、若年性認知症者の総数は3.57万人と推計されたと発表した。この研究は、同センター研究所の粟田主一副所長らの研究グループによるもの。
若年性認知症では、高齢者とは異なるその年代に合った社会支援が求められるが、そのための社会政策や社会資源は今なお不十分な状況だ。そのため今回の研究は、今後の若年性認知症施策を考える基礎資料を得るために、今日の若年性認知症の有病率、有病者数、生活実態を把握することを目的とした。
同研究では、全国12地域(北海道、秋田県、山形県、福島県、茨城県、群馬県、東京都、新潟県、山梨県、愛知県、大阪府、愛媛県)において、1万6,848か所の医療機関、介護サービス事業所、障害福祉サービス事業所、相談機関等の協力を得て、全国の若年性認知症の標準化有病率と有病者数を推計した。
約6割は発症時点で就労していたが、そのうち約7割が退職
研究の結果、2018年時点での日本における若年性認知症有病率は人口10万人あたり50.9人(95%信頼区間:43.9-57.9)、有病者数は3.57万人、原因疾患別では、アルツハイマー型認知症(52.6%)が最も多く、血管性認知症(17.1%)、前頭側頭型認知症(9.4%)、頭部外傷による認知症(4.2%)、レビー小体型認知症/パーキンソン病による認知症(4.1%)、アルコール関連障害による認知症(2.8%)がそれに続くことが明らかとなった。
生活実態調査より、最初に気づいた症状で多かったのは「もの忘れ」(66.6%)、「職場や家事などでのミス」(38.8%)であることが判明した。また、約6割は発症時点で就労していたが、そのうち約7割が調査時点で退職。その約6割が世帯収入の減少を感じており、主たる収入源は約4割が障害年金、約1割が生活保護であり、約3割は介護保険の申請をしていないことが明らかとなった。
前回調査より有病率は若干増加、若い世代の人口減で有病者数は減少
日本では2006~2008年度に若年性認知症の有病率調査が行われており、有病率は人口10万人あたり47.6人、有病者数は3.78万人と推計された。前回調査と比較して有病率は若干増加したが、有病者数は減少しており、これは若い世代の人口減によるものだという。
また、前回調査では血管性認知症が最も大きな割合を占めたが、今回の調査ではアルツハイマー型認知症の割合が最も高くなり、前頭側頭型認知症の割合も増加。その背景には、若年性のアルツハイマー型認知症や前頭側頭型認知症に対する国民の意識の高まりとともに、変性型認知症に対する医療機関の診断精度の向上が関係しているのではないかと考えられるとしている。
生活実態調査の結果では、多くの若年性認知症患者が発症時には就労しているものの、退職を余儀なくされ、その結果収入が減少し、主な収入源が障害年金や生活保護になっていることを示している。また、今回の調査では、若年性認知症者の多くが認知症疾患医療センターで診断されていることも明らかになった。
認知症疾患医療センターにおける質の高い診断と診断後支援、就労・経済・社会参加など若年性認知症患者のニーズに合ったサービスの充実が求められる、と研究グループは述べている。
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・東京都健康長寿医療センター プレスリリース