ラニチジンをめぐっては、海外で発癌性物質のNDMAが検出され、国内でも一部製剤で暫定基準値を上回る量が検出されたことから、製薬各社が昨秋に自主回収を実施した。類似薬のニザチジンの一部製剤についても同様の措置が取られている。
発癌性物質の検出事案を踏まえ、国立医薬品食品衛生研究所は、短期間と長期間の両面から、これら製剤を使用した場合に健康に与えるリスクについて、げっ歯類の発癌性データをもとに算出した上で評価を行った。
その結果、ラニチジン経口製剤300mgを8週間毎日服用した場合、約50万人に1人(0.0002%)の割合で過剰に癌を発症する程度のリスクとした。同様の用量で2年間毎日服用した場合は、約20万人に1人(0.0005%)の割合と評価した。
また、ラニチジン注射製剤200mgを7日間毎日投与した場合は、約1億5000万人に1人(0.00000065%)の割合で過剰に癌を発症する程度のリスクに相当すると評価した。
一方、ニザチジン経口製剤300mgを8週間毎日服用した場合は、約2500万人に1人(0.000004%)より小さい割合とした。
同様の用量で2年間毎日服用すると、約560万人に1人(0.000018%)の割合で過剰に癌を発症する程度のリスクと評価した。
国衛研の評価結果について、望月眞弓委員(慶應義塾大学薬学部病院薬学講座特任教授)は「どう解釈するかが難しい。情報提供のあり方について、医療や科学の専門家、消費者、患者代表で検討すべき」との考えを示した。
これに対して、厚労省は「リスクが高い、低いと表現することは難しい。まずは定量的な情報を現場に提供し、患者の背景情報を含めて丁寧に説明してもらうことが良いのではないか」と応じた。
評価結果については、できる限り早期に事務連絡で医療機関などに周知したい考えである。