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【第一三共】抗体薬物複合体で大型契約-英AZから最大約6600億円

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2020年07月29日 AM10:30

第一三共は27日、抗TROP2)「」について、英アストラゼネカ(AZ)とグローバル開発・販売に関する提携契約を締結した。契約により、AZから契約一時金10億ドル(約1100億円)や各種マイルストンを含めて最大総額60億ドル(約6600億円)を受け取る。両社は昨年3月にも、第一三共が創製した抗HER2「エンハーツ」に関して、最大69億ドルの共同開発・販売契約を発表しており、「DS-1062」もエンハーツに続く二つ目のADCとして大型契約に至った。

眞鍋淳社長兼CEOは、同日に開催した説明会で、AZのこれまでの抗癌剤開発の豊富な経験と高い専門性を評価。「二つのADCでパートナーシップを組むことによって、かなり開発力の増強ができると考えている」と提携の意義を説明した。

「DS-1062」は、第一三共独自のリンカー技術によって抗TROP2抗体にトポイソメラーゼI阻害剤を結合させたADC。現在、手術不能で進行・転移性の非小細胞肺癌とトリプルネガティブ乳癌を対象とした第I相試験を日米で実施している。

同社は、癌に強みを持つグローバル企業への成長に向け、エンハーツに次いで「DS-1062」の価値最大化を重要課題と位置づけており、エンハーツについてはAZと包括的契約を締結する一方で、「DS-1062」は自社単独での展開も視野に開発を進めてきた。

しかし、米国では、競合他社の抗TROP2ADCがトリプルネガティブ乳癌の適応で承認を取得し、4月に上市。卵巣癌など複数の癌腫を適応とした臨床試験も進行している。「DS-1062」は、肺癌の適応で優先的に開発を進めており、適応症は異なるものの、競合品が先行する形となっている。

眞鍋氏は、「DS-1062」について、「ベストインクラスの抗TROP2ADCと考えている」と強調。その一方、競合品の上市を受け、既にエンハーツで提携しているAZの抗癌剤開発の豊富な経験を活用することで、「計画中の試験の加速と癌腫の拡大が重要であると考えた」と述べ、早期に市場に投入していきたい考えを示した。

今回の契約により、第一三共はAZから契約時に3億5000万ドル、1年後に3億2500万ドル、2年後に3億2500万ドルの合計10億ドルの契約一時金を受け取る。また、開発マイルストン達成時に最大10億ドル、販売マイルストンの達成により最大40億ドルを受け取る。

一時金と開発マイルストンは、複数年度にわたって売上収益として繰延計上し、販売マイルストンについては、達成年度に一括で計上する。眞鍋氏は、「金額としては、エンハーツとほぼ同額であり、薬剤の期待度としても同じようなものがあると思っている」と述べた。

今後は、同剤の全世界での利益と開発・販売費用を両社で折半し、売上収益は、日本、米国、欧州の第一三共が拠点を有する各国では第一三共が計上し、中国や豪州、カナダ、ロシアなどその他の地域ではAZが計上する。

これにより、「DS-1062」に関する費用の大幅な削減が見込まれる。眞鍋氏は、重点的にリソースを投入しているエンハーツ、「DS-1062」、抗HER2ADC「U3-1402」の三つのADC加え、後に続く開発品についても想定以上に進捗しているとの見解を示し、「今回の提携によって浮いた開発費用を他の薬剤に投じることも想定している。10年後を見越して、より早期ステージの開発品にも予算を費やしたい」と語った。

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