■厚労省が手引き改訂
厚生労働省は17日付で「新型コロナウイルス感染症診療の手引き」を改訂し、ステロイド系抗炎症薬「デキサメタゾン」を新型コロナウイルス感染症に対する治療薬として記載した。デキサメタゾンは重症感染症を効能・効果の一つとしており、英国のランダム化比較試験で投与患者群の致死率低下が確認されたことなどを受けた対応。手引きで承認済み治療薬として位置づけられたのは、5月に特例承認されたレムデシビルに続いて2番目となる。
抗炎症薬のデキサメタゾンは、重症感染症のほか、喘息、多発性硬化症等の治療薬として承認、保険適用され、比較的安価に入手できるなどの利点を持つ。
英オックスフォード大学が主導して実施した「RECOVERY試験」では、6mgを1日1回経口または静脈内注射で10日間投与する患者群と、標準治療を実施する患者群に分けた上で、治療開始から28日後の死亡率を比べた。
その結果、デキサメタゾン投与群の死亡率は21.6%、標準治療群は24.6%で、デキサメタゾンの投与で致死率の低下が確認された。
また、人工呼吸器が必要な患者の致死率はデキサメタゾン投与群で29%、標準治療群で40.7%と10%以上の差が見られた。一方、酸素投与の必要がない患者の致死率は投与群で17%、標準治療群で13.2%となり、効果を認めなかったとしている。
この試験結果を受け、米国立衛生研究所(NIH)は6月に治療ガイドラインを改訂し、人工呼吸または酸素投与が必要な新型コロナウイルス感染症患者にデキサメタゾンの使用を推奨している。
これらを踏まえ、厚労省は手引きの薬物療法の項目を改訂し、「国内で承認されている医薬品」にデキサメタゾンを追記した。
新型コロナウイルス感染症を対象とする治療薬をめぐっては、米ギリアド・サイエンシズの「レムデシビル」(販売名:ベクルリー点滴静注)が国内初の治療薬として5月に特例承認されているが、今回の手引き改訂により、デキサメタゾンが2番目の治療薬に位置づけられた。
デキサメタゾンは、新型コロナウイルス感染症を効能・効果としていないものの、既に重度の感染症等の効能・効果で承認されているため、新たな承認手続きなしに医療現場で使用可能としている。