被検者由来の飛沫やエアロゾルの拡散への対策はほとんど普及しておらず
東北大学は7月27日、内視鏡検査において被検者から排出される飛沫を捕捉してエアロゾル拡散を低減させるための新規デバイスを考案したと発表した。この研究は、仙台病院消化器科の遠藤博之医師、同大大学院医学系研究科消化器病態学分野の正宗淳教授、小池智幸准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Digestive Endoscopy誌」電子版に掲載されている。
世界的な新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、内視鏡診療に携わる医療スタッフはその感染リスクに直面している。例えば、唾液といった被検者の体液に直接接触するリスクがあるほか、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)の検査中は被検者がマスクを外すため、被検者の嘔吐反射や咳に由来する飛沫やエアロゾルに暴露するリスクが挙げられる。
内視鏡関連学会からは内視鏡検査の被検者のトリアージ(感染が疑われる被検者の検査の中止・延期)、医療スタッフの感染防護策(マスク、フェイスシールド、ガウン、グローブ、キャップなどの着用による個人防護)の徹底についての言及はなされているものの、被検者由来の飛沫やエアロゾルの拡散への対策はほとんど普及していないのが現状だ。
感染症状の有無による被検者のトリアージは不顕性感染者(無症状の感染者)を認識することが困難なため、感染した被検者が内視鏡診療の現場に紛れ込む可能性があり、その場合、検査中に発生する飛沫やエアロゾルを介して、医療スタッフや他の被検者へ感染拡大をきたすことが懸念される。そのような背景から、被検者由来の飛沫やエアロゾルの拡散に対する対策としては、全ての被検者に適用できるよう、簡便に使用できかつ低コストで実現可能な内容が求められる。
画像はリリースより
簡便に使用でき低コストで作成可能、新たな標準予防策となる可能性
今回、研究グループは、内視鏡検査において被検者から排出される飛沫を捕捉してエアロゾル拡散を低減させるための新規デバイスを考案した。不織布に内視鏡用マウスピースにとりつけるための切れ込み、内視鏡を通過させる切れ込みを入れた後、その不織布を内視鏡用マウスピースに固定。不織布が被検者の口元や鼻を覆い、中心部の切れ込み部を介して内視鏡の挿入が可能な状態となる。
同デバイスの使用に際し、被検者の呼吸のストレスや術者の内視鏡操作のストレスは問題ないレベルと考えられ、上部消化管内視鏡検査において被検者から排出される粗大な飛沫が捕捉されエアロゾル拡散の低減が期待されるという。
同デバイスは簡便に使用でき、かつ低コストで作成可能であるため、従来の新型コロナウイルス感染症の感染防護策に加えて全内視鏡検査に適用できる新たな標準予防策になりえるという。内視鏡診療を介した新型コロナウイルス感染症の拡大抑止の一助となることが期待される、と研究グループは述べている。
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・東北大学 プレスリリース