スマート治療室と遠隔地の専門医を接続、高精細な手術映像など大容量データの双方向通信を検証
東京女子医科大学は7月21日、商用第5世代移動通信方式(以下、商用5G)を活用した遠隔手術支援システム、および移動型スマート治療室「SCOT(R)」を用いた実証実験を2020年10月に実施すると発表した。この研究は、同大と株式会社NTTドコモの研究グループによるもの。実施期間は、2020年10月~2021年3月を予定している。
今回の実証実験では、商用5Gを介してスマート治療室と遠隔地の専門医を接続し、高精細な手術映像など大容量データの双方向通信を検証する。商用5Gとドコモのクラウドサービス「ドコモオープンイノベーションクラウド(R)」を活用した遠隔医療実験は国内初となる。
これにより、緊急の脳外科手術などで熟練医が不在のときや、感染症などで入室可能な医療スタッフが限定された状況でも、遠隔から手術支援を行うことが可能となる。社会的問題となっている高度医療従事者不足に伴う医師の負担増大や地域医療における医師偏在などの課題解決を目指す。
画像はリリースより
遠隔の専門医が手術の状況を俯瞰的に確認、手術時の指導や支援を行う
今回の実証実験では、IoT技術を活用して各種医療機器・設備を連携させるスマート治療室「SCOT」を活用する。東京女子医科大にあるスマート治療室と、専門医がいる「戦略デスク」を商用5Gと「ドコモオープンイノベーションクラウド」で接続する。
スマート治療室内で脳外科手術を行う執刀医の手元映像や、4K外視鏡の高精細映像などの大容量のデータを、専門医のいる「戦略デスク」へリアルタイムで送る。遠隔の専門医が手術の状況を俯瞰的に確認し、手術時の指導や支援を行う。実証実験を通じてシステムの有用性を確認し、先進医療の現場での活用を目指して、検討を進める。また、移動型スマート治療室「モバイルSCOT」と専門医がいる「戦略デスク」を商用5Gで接続し、車載医療機器の高精細リアルタイム画像伝送実証も行う予定だ。
データの伝送には、ドコモのクラウドサービス「ドコモオープンイノベーションクラウド」を使用する。これにより手術のデータを高セキュリティに、また大容量データを低遅延で伝送することが可能。スマート治療室内の複数の医療機器データ管理は、医療情報統合プラットフォームの「OPeLiNK(オペリンク)(R)」を活用する。なお、今回の実証のSCOT内の4K外視鏡はオリンパス社製のものを使用し、医療情報統合プラットフォームの運営を株式会社OPExPARKが行う。
医療スタッフ不足や医師偏在の解消による医療水準の高度均てん化などに期待
東京女子医大とドコモは2019年11月に同大が保有するスマート治療室で5Gを介した遠隔手術支援に関する共同実証実験を行う覚書を締結。この覚書における取り組みの一環として、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの採択案件である「8K等高精細映像データ利活用研究事業」の事業課題名「8Kスーパーハイビジョン技術を用いた新しい遠隔手術支援型内視鏡(硬性鏡)手術システムの開発と高精細映像データの利活用に関する研究開発(事業機関:国立がん研究センター)」の枠組みのもとで実証実験を行う。
東京女子医大とドコモは、社会問題化している医療スタッフ不足や医師偏在の解消による医療水準の高度均てん化や先端技術の導入による医療分野でのデジタルトランスフォーメーションの実現に貢献していく、と述べている。
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・東京女子医科大学 プレスリリース