好酸球性肺炎で重要なIL-33、肺組織における誘導メカニズムは?
兵庫医科大学は7月16日、さまざまな病気に関わる「人の組織傷害」が、アレルギー症状を引き起こす原因となる物質(IL-33)の産生を引き起こすことを証明したと発表した。この研究は、同大免疫学講座の足立匠助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Immunology」に掲載されている。
気管支ぜんそくや腸管寄生虫が感染した肺では、著明な好酸球浸潤と杯細胞からの粘液分泌亢進が認められる。このような変化はIL-5やIL-13といったTh2型サイトカインの作用で誘導される。従来はTh2細胞がIL-5とIL-13を産生すると考えられてきた。その後、同研究グループの糞線虫感染モデルを用いた研究などから、感染初期にはグループ2自然リンパ球(ILC2)がTh2型サイトカインを産生することが明らかとなった。肺で産生されたIL-33はILC2の強力な活性化因子として作用し、ILC2の増殖とIL-5とIL-13の産生を誘導する。その結果、肺において好酸球性炎症が誘導される。しかし、IL-33の発現がどのような機序で誘導されるのか全く不明であった。研究グループは、アレルゲンや寄生虫によって組織が傷害されるとDAMPsもしくはAlarminと呼ばれる細胞内物質群が細胞外へと放出され、次に、DAMPsの作用で肺組織がIL-33を産生するようになると考え、今回、DAMPsの同定、並びにDAMPsによるIL-33産生誘導メカニズムを研究した。
肺組織傷害<RBBP9遊離<COX2とPGE2合成酵素1誘導<PGE2産生<IL-33発現
研究グループはまず、マウス肺の組織抽出物を作製し、in vitroで線維芽細胞を刺激、またはマウスに経鼻投与した。その結果、組織抽出物がIL-33のmRNA発現を誘導することが判明。そこで、肺の組織抽出物中の可溶性タンパク画分を分離精製し、プロテオミクス解析を行ったところ、RBBP9が同定された。
続けて、肺組織抽出物、またはリコンビナントRBBP9で線維芽細胞を刺激した結果、強力なCOX2とPGE2合成酵素-1の発現が誘導され、また、PGE2産生が認められた。さらに、COX2阻害剤、PGE2レセプター競合阻害剤を用いた実験を重ねた結果、肺組織抽出物、またはリコンビナントRBBP9刺激による線維芽細胞のIL-33発現誘導がPGE2を介することがin vitro、in vivoで判明した。
最後に、CRISPR-Cas9を用いた遺伝子編集によりRBBP9欠損マウスを作製して解析。その結果、糞線虫感染後の初期のIL-33発現上昇が、野生型マウスに比べ有意に抑制されていることが明らかとなった。
IL-33はT細胞、肥満細胞、ILC2を刺激して、アレルギー応答に関与する2型炎症応答を誘導する。従ってIL-33産生を誘導するRBBP9の発見は、アレルギー炎症の制御を可能にする新規ターゲット因子の発見でもあると考えられる。さらに、今回の研究からRBBP9がPGE2の産生を介してIL-33の産生を誘導することが明らかとなった。研究グループは、「今後、RBBP9とPGE2の産生と機能を制御することで、IL-33が関与するアレルギー疾患の治療に役立つものと期待している」と、述べている。
▼関連リンク
・兵庫医科大学 研究成果