繰り返す症状悪化などへの不安から、補完代替療法を使用する患者も
国立成育医療研究センターは7月8日、アトピー性皮膚炎において補完代替療法(民間療法など)の使用歴の有無が、その後の重症度やQOL(Quality of Life、生活の質)にどのような関連があるのかを調査した結果を発表した。これは、同センターのアレルギーセンター大矢幸弘センター長、山本貴和子氏、佐藤未織氏らのグループによるもの。研究成果は、「Journal of Dermatological Science」に掲載されている。
画像はリリースより
補完代替療法は、一般的に従来の通常医療と見なされていない、さまざまな医学・ヘルスケアシステム、施術、生成物質などの総称(米国国立補完統合衛生センターによる定義)で、アトピー性皮膚炎のガイドラインでは、標準治療として推奨されていない。しかし、アトピー性皮膚炎の患者は、標準治療(特にステロイド外用薬)や、アトピー性皮膚炎の症状悪化の繰り返しに不安を持ち、補完代替療法を使用することがある。
そこで研究グループは、アトピー性皮膚炎の小児患者の補完代替療法使用歴と、アトピー性皮膚炎に関する重症度やQOLなどとの関連を明らかにするため、調査を行った。
補完代替療法の使用歴ありのグループでは、ステロイド外用薬を自ら中断する割合も高く
調査対象は、2015年4月1日~2016年3月31日の1年間に、同センターのアレルギーセンターを初めて受診したアトピー性皮膚炎の子ども187人(0~19歳)。アレルギーセンター初診時までの補完代替療法の使用歴や、臨床情報について電子カルテデータを用いて後方視的に調査した。初診時のアトピー性皮膚炎の重症度や保護者のQOL、また初診時までの標準治療の自己中断歴について、補完代替療法の使用歴のない患者グループ(152人)と使用歴のある患者グループ(35人)で、比較検討した。
その結果、小児アトピー性皮膚炎に対する初診までに補完代替療法の使用歴がある患者グループは、ないグループと比較して、より初診時のアトピー性皮膚炎の重症度が高く、保護者のQOLが低いことがわかった。また、補完代替療法の使用歴のある患者グループでは、ないグループと比較して、標準治療(ステロイド外用薬)を自ら中断する割合が高く、患者や家族が標準治療(ステロイド外用薬)や症状悪化の繰り返しに不安を持っていた可能性があった。
ステロイド外用剤はアトピー性皮膚炎の標準治療とされているが、ステロイドフォビア(ステロイド外用剤使用に対する不合理な恐怖や不安)はどの患者にも起こりうる身近な問題であり、強いフォビアになると、患者教育には相当な時間が必要となる。これらの思想に至る経緯は適切な医療を受けられなかった経験が根底にあることがほとんどで、ステロイド外用薬を処方する医師の適切な指導が必須と考えられた。
病態や標準治療について、医療従事者が正確で十分な情報を患者・家族へわかりやすく伝えることが大切
今回の研究は後方視的な横断研究のため、補完代替療法の使用で重症度に影響が出たのか、重症度が高いために補完代替療法を使用したのかは明らかでない。アトピー性皮膚炎の重症度やQOLとの関連は明らかになったが、因果関係を結論づけることはできないとしている。
しかし、フォビアを元から作り出さないためにも、アトピー性皮膚炎の病態や標準治療について、医療従事者が正確で十分な情報を患者・家族へわかりやすく伝えること、また患者・家族の標準治療に対する不安や補完代替療法の使用について医療従事者が把握するよう努めることが必要だ、と研究グループは述べている。
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・国立成育医療研究センター プレスリリース