AIを用いて経過年ごとの発症確率を推定する方法を開発
追手門学院大学は7月13日、AIを用いた脳のMRI画像解析から、高齢者がいつどの程度の確率でアルツハイマー病を発症するかを予測する方法を開発したと発表した。これは同大の小野田慶一教授(研究当時:島根大学)と島根大学医学部神経内科の長井篤教授および株式会社ERISA(島根県松江市)の共同研究グループによるもの。研究成果は、「Brain Communications」に掲載されている。
画像はリリースより
研究グループは、健康な人と、アルツハイマー病に関する公開データベースおよび島根大学医学部神経内科の外来患者を合わせた計2,142例を対象に調査を行った。ベースライン時に脳のMRI構造画像を測定し、一定期間ごとにアルツハイマー病に進行したかどうかのフォローアップデータを取得した。
アルツハイマー病は、脳の萎縮を1つの特徴とする。従来のクラス分類に基づく手法では、「2年以内に発症するかどうか」といった、2分法による推定しか行われていなかった。そこで今回、脳MRI画像から領域ごとの灰白質容積を算出、これを特徴量とし、深層生存分析という機械学習の手法を用いて、経過年ごとの発症確率を推定する方法を開発し、解析を行った。
開発した手法のConcordance indexは最大0.835
「Concordance index」という指標でモデルのパフォーマンスを評価したところ、開発した手法のConcordance indexは最大で0.835であった。これは、高齢者をランダムに2人選んできたときに83.5%の確率でどちらが先にアルツハイマー病になるかを正答できるという値に相当する。
また、どの脳領域がアルツハイマー病発症予測に重要かを調べたところ、従来からアルツハイマー病との関連が示唆されるデフォルトモードネットワークだけでなく、前帯状回や島皮質といった顕著性ネットワークも重要な情報源であることが示された。
アルツハイマー病を発症しやすいタイプか、発症しやすくないタイプかの研究はこれまでにあったが、今回のように個人の発症確率を経過年数ごとに予測する手法を確立したのは画期的だ。小野田教授は、「個人レベルでアルツハイマー病の発症リスクを将来の経過年数ごとに評価できるようになった。今後は研究成果の医療等への応用も考えられる」と、述べている。
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・追手門学院大学 プレスリリース