心臓リハビリ領域の遠隔医療として国内初の医師主導治験
大阪大学は7月13日、心疾患に対するオンライン管理型心臓リハビリテーション医療機器(通称:RH-01)の医師主導治験を開始すると発表した。これは、リハビリ領域における遠隔医療として国内初の医師主導治験となる。この研究は、同大大学院医学系研究科の坂田泰史教授(循環器内科学)を中心とした研究グループによるもの。日本医療研究開発機構(AMED)および株式会社リモハブより支援を受けて実施される。
日本における年間総死亡数のうち19万6,113人の原因が心疾患であり(死因別死亡数全体の第2位の15.2%)、最多は心不全(7万1,820人)と報告されている。日本における心不全患者数は120万人以上と推定されており、高齢者に多い疾患であることから今後もさらなる増加が見込まれている。このような患者の心肺機能を改善させるため、通院下での心臓リハビリテーションが行われてきたが、実施できている患者は1割未満に留まっている。その主な理由として、患者が高齢なために頻回の通院が難しいことが挙げられる。
画像はリリースより
医療者がリアルタイムで在宅の患者のリハビリを管理できる「RH-01」
坂田泰史教授、谷口達典医師らの研究グループでは、2015年より医療機器イノベーション人材育成プログラムを通して、医療現場のニーズから、通院に支障をきたす高齢心疾患患者に対し、適切な心臓リハビリテーションを提供するために、遠隔地からの管理を可能とするオンライン管理型心臓リハビリテーションシステムを考案してきた。2017年には大学発ベンチャー企業の株式会社リモハブを立ち上げ、共同研究体制を敷き、産学・医工連携による本格的な製品開発着手に至った。
RH-01は、医療アプリ(医療機関側および在宅側)、エルゴメーター、心電計をコンポーネントとし、医療者がリアルタイムで在宅の患者のリハビリテーションの様子を管理することを可能とする。2018年には、同治験に先駆けて少数例の心疾患患者を対象としたパイロット試験を実施し、フィージビリティを確認している。
心臓リハビリの適応となる心疾患対象、128症例を目標に
今回の治験「心臓リハビリテーションの適応となる心疾患患者を対象としたRH-01の有効性および安全性を検証する多施設共同無作為化並行群間比較試験」では、頻回の通院が困難な心疾患患者に対し、在宅における有効かつ安全な心臓リハビリテーションを実施できる環境を構築するため、オンラインでのモニタリングを可能とする心臓リハビリテーションシステムの有効性と安全性を検証する。IoT技術を活用することで医療資源の効率化を図ることができ、Society 5.0の流れに沿ったオンラインでの管理型リハビリテーションという新しい医療モデルとなることが期待される。
同治験では、心臓リハビリテーションの適応となる心不全患者および狭心症、開心術後、大血管疾患、末梢動脈閉塞性疾患患者を対象とし、オンライン心大血管リハビリテーションシステムRH-01の有効性および安全性について、通院リハビリテーション群を対照として12週間の介入を多施設共同無作為化群間比較試験にて行い、RH-01群による介入が通院リハビリテーション群に対して非劣性であることを検証する。
治験実施機関は全国8施設で、128症例を目標とする。今後、施設数を増やす可能性もあるとしている。
COVID-19など感染症拡大の状況下、外出による感染リスク低減にも期待
同治験を経てRH-01が医療機器として承認された場合、心臓リハビリテーション実施率の大幅な向上が見込まれるという。ガイドラインでは、心疾患においては週3回の心臓リハビリテーションが推奨されており、心臓リハビリテーションを正しく実施することによって、再入院率の大幅低下につながる。その結果として、患者のQOL向上、家族の介護負担軽減、再入院率の低下による社会保障費減等、さまざまな社会課題解決を見込んでいるとしている。
その他、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)といったウイルス等感染症拡大などの状況下においても、外出による感染のリスクを低減し、自宅で心臓リハビリテーションを実施することができることから、質の高い医療を継続して受けることが可能となる、と研究グループは述べている。