藤田医科大学は10日、新型コロナウイルス感染症患者に抗インフルエンザ薬「アビガン」(一般名:ファビピラビル)を投与する特定臨床研究の結果、主要評価項目のウイルス消失率に統計的有意差はなかったとする最終報告を発表した。新型コロナウイルス感染症への効果が大きな注目を集めていたアビガンだが、多施設ランダム化臨床試験の結果、明らかな有効性は認められなかった。今後の焦点は、富士フイルム富山化学が実施中の第III相試験に移りそうだ。
■藤田医大など臨床研究で
今回の特定臨床研究は、全国47医療機関で実施されたアビガンの多施設非盲検ランダム化臨床試験。3月上旬から5月中旬に新型コロナウイルス感染症の無症状患者と軽症患者89人が参加し、このうち44人をアビガンを1日目から内服する通常投与群、45人を6日目から内服する遅延投与群に無作為に割り付け、ウイルス量が低減するかを検証した。
その結果、主要評価項目に設定した遅延投与群が内服を開始する「6日目までの累積ウイルス消失率」は、通常投与群で66.7%、遅延投与群で56.1%となった。また、副次評価項目である「6日目までのウイルス量対数値50%減少割合」は通常投与群で94.4%、遅延投与群で78.8%となり、探索的評価項目の「37.5℃未満への解熱までの平均時間」は通常投与群で2.1日、遅延投与群で3.2日だった。
これらの結果から、藤田医大は、通常投与群では遅延投与群に比べ6日目までにウイルス消失や解熱に至りやすい傾向が見られたものの、統計的有意差は見られなかったと結論づけた。ランダム化臨床試験において、新型コロナウイルス感染症に対するアビガンの有効性は示されなかった格好だ。
一方、アビガン投与に関連する有害事象については、血中尿酸値上昇が84.1%、血中トリグリセリド値上昇が11.0%などとなり、検査値異常としての尿酸値上昇がアビガン投与中の患者の大半に見られたものの、その他の重篤な有害事象は確認されなかったとしている。
アビガンをめぐっては、新型コロナウイルス感染症の軽症患者への早期投与で有効性が期待できると考えられていたが、今回のランダム化臨床試験では主要評価項目のウイルス消失率で統計的有意差が見られず、明らかな有効性も確認できない結果となった。