フレイルから非フレイルおよびフレイル予防に寄与する日常生活の行動を調査
東京都健康長寿医療センター研究所は7月9日、特定地域の65歳以上を対象とした追跡研究から、フレイルな状態であっても農作業、知的活動、社会参加をしている者は、非フレイルな状態へと改善しやすいことを明らかにしたと発表した。これは、同研究所の北村明彦研究部長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Maturitas」に掲載されている。
画像はリリースより
フレイルとは、自立喪失(介護が必要な状態や死亡)のリスクが高まっている状態であり、健常な状態と自立喪失した状態の間に位置していると考えられている。これまで、短期間(3~6か月程度)の運動や栄養改善によってフレイルから非フレイルへ改善するという介入研究の成績は数多く報告されている。一方、日常生活における行動に着目した研究は少なく、どのような日常行動が長期的にみてフレイル予防につながるのか、フレイルから非フレイルな状態への改善に寄与するのか、についての知見は不十分であった。
「本を読む」「地域活動参加」「農作業」がフレイル予防に
研究では、兵庫県の一農村地域に在住する65歳以上の高齢男女3,769人を5年間追跡。フレイルの評価は15項目の質問からなる「介護予防チェックリスト」を用いて、7種類の日常的な行動(農作業、買い物、運動、食事、知的活動、社会参加、喫煙)を調査。研究参加者のうち、初回調査時に非フレイルな状態であった者は70% (2,633人)、フレイルな状態であった者は30% (1,136人)だった。
5年後の追跡調査時、非フレイルからフレイルな状態に悪化した者が17%、フレイルな状態から非フレイルに改善した者が15%確認された。喫煙以外の各行動はフレイル予防や自立喪失(介護が必要な状態および死亡)の予防に寄与しており、逆に、喫煙はフレイルではない高齢者の自立喪失を促進していた。
フレイルの特徴の一つである可逆性にも着目して解析したところ、初回調査時にフレイルであった高齢者において、農作業をしていた者、本や雑誌を読むといった知的活動を日常的に行っていた者、地域活動やサロンなどへの参加(社会参加)を行っていた者は、それぞれ行っていなかった者に比べて、フレイルから非フレイルな状態に改善しやすい傾向にあることが示された。さらに、農作業、知的活動、社会参加は、フレイル予防になることも示された。
この研究成果の意義は、日常の生活場面での応用が可能な知見を示した点にある。すなわち、フレイルになる前から予防的な行動を取ることはもちろんのこと、フレイルになっても外出し他者と交流する、頭を使うといった行動を継続していくことの重要性が明らになった。農作業の効用がみられた点については、今回の対象地域の主要な産業が農業であることが関係していると考えられるという。「フレイルになると、健康的な日常行動を取るのを止めてしまう、あるいは困難になることがある。しかし、フレイルになっても健康的な日常行動をできるだけ維持すること、そのような行動を継続するための支援と環境整備を進めることにより、フレイルの改善が期待できる」と、研究グループは述べている。
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・東京都健康長寿医療センター研究所 プレスリリース