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腹膜転移を有する膵がん、腹腔内投与併用療法P1/2試験で有効性・安全性を確認-関西医科大ほか

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2020年07月09日 PM12:00

・ナブパクリタキセル療法に、パクリタキセルの腹腔内投与を併用する治療法を考案

関西医科大学は7月8日、腹膜転移を伴う膵がん(ステージ4)に対してゲムシタビン・ナブパクリタキセル療法に加え、パクリタキセルの腹腔内投与を併用する治療法を考案し、国内で多施設共同臨床試験を実施した結果を発表した。この研究は、同大外科学講座の里井壯平診療教授(研究代表者)、名古屋大学大学院医学系研究科消化器外科学の小寺泰弘教授、山田豪講師、富山大学の藤井努教授ら、、愛媛大学の研究グループによるもの。研究成果は、国際科学雑誌「British Journal of Surgery」掲載されている。


画像はリリースより

膵がんは消化器がんの中でも極めて治療成績が不良であり、5年生存率はいまだに10%前後と報告されている。膵がんの診断時、すでに局所進行や遠隔転移のために切除不能である患者は70~80%とされ、その中でも「腹膜転移」を伴う膵がんは腹水や腸閉塞をきたし、低栄養や全身状態の悪化から抗がん剤治療を受ける機会を失うことになる。

抗がん剤を直接腹腔内に投与する方法は、全身化学療法と比べてより高濃度でがん細胞を治療できるメリットがあり、この「腹膜転移」に対する腹腔内投与は、これまで卵巣がんや胃がんなどで試みられてきた。研究グループもこれまでに、膵がんに対してこの腹腔内投与に取り組んできており、パクリタキセルの腹腔内投与と内服抗がん剤の1種S-1を併用する治療法のP2試験を行い、有効性と安全性に関して論文報告をしている。

近年、遠隔転移を伴う膵がんに対してはゲムシタビン・ナブパクリタキセル療法という新規抗がん剤が広く使用されるようになり、標準治療になっている。今回、研究グループはこのゲムシタビン・ナブパクリタキセル療法にパクリタキセルの腹腔内投与を組み合わせる治療法を考案し、有効性と安全性を検証した。

がん性腹水は40%の患者で消失

今回実施された試験はP1/2試験。P1では患者10人が登録され、「用量規制毒性」を評価することで、各抗がん剤の推奨用量を設定。その後、P2では46人の患者が登録され、ゲムシタビン・ナブパクリタキセル療法にパクリタキセルの腹腔内投与を組み合わせる治療法の有効性と安全性が評価された。

治療成功期間中央値は6.0か月であり、膵がん原発巣は平均20%の縮小を認めた。腫瘍マーカーは84%で低下し、正常化まで認めた患者は26%だった。治療奏功率は49%、病勢コントロール率は95%と高い治療効果が得られた。がん性腹水は40%の患者で消失し、陽性であった腹水のがん細胞は39%で陰性になった。生存期間中央値は14.5か月、1年全生存割合は61%だった。

腹膜転移消失で膵がん切除まで実施した患者は17%

腹膜転移を伴う膵がん(ステージ4)は手術適応ではないが、この治療法によって腹膜転移が消失して最終的に膵がんの切除まで実施した患者は17%で、切除できなかった患者と比較して明らかに良好だったという。

同治療法の血液学的な副作用は76%、非血液学的な副作用は15%だったが、治療中に大きなトラブルなく管理できたとしている。

腹腔内投与併用療法と標準療法を比較するP3試験を実施中

同試験により、これまで有効な治療法がなかった腹膜転移を伴う膵がん(ステージ4)に対して、ゲムシタビン・ナブパクリタキセル療法とパクリタキセル腹腔内投与併用療法は臨床的に有効で、安全性も確認された。

日本で開発されたS-1は欧米ではあまり使用されていないことから、研究グループは「前試験のようにS-1を使用できない国や地域でも同治療法が利用できることはメリット」と述べている。

また、現在研究グループは、国内多施設共同第3相試験として、この腹腔内投与と標準療法の比較試験を遂行しており、難治性膵がんの治療成績のさらなる向上に寄与すると考えられる、としている。(QLifePro編集部)

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