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ICU治療を要した重症COVID-19、ナファモスタットとファビピラビル併用治療で有効性示唆-東大病院

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2020年07月08日 AM11:45

作用部位が異なる2剤の併用で相加的な効果を期待

東京大学医学部附属病院は7月6日、ナファモスタットメシル酸塩(以下、)を新型コロナウイルス感染症()に対する治療薬候補として選択し、(製品名:アビガン)との併用によって、肺炎を発症し集中治療室()での治療を必要とした重症のCOVID-19症例に対してコンパッショネート(人道的)使用による治療を行い、その観察研究の結果を発表した。この研究は、同院救命救急センター・ERの土井研人准教授、早瀬直樹助教[特任講師(病院)]、同感染制御部の池田麻穂子助教[特任講師(病院)]、森屋恭爾教授、同救急科の森村尚登教授、ほか、COVID-UTH研究グループによるもの。研究成果は、「Critical Care」ののオンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

新型コロナウイルス()の感染が全世界的に拡大しており、その対策が急がれている。今後の第二波、第三波の到来に備えて、COVID-19の治療薬の開発が喫緊の課題だ。東京大学では、ナファモスタットがウイルスのヒト細胞への侵入を抑制することで、COVID-19に対する有効性が期待できる治療薬として基礎的研究成果を発表してきた。今回、東京大学医学部附属病院では、ナファモスタットをCOVID-19に対する治療薬候補として選択し、ファビピラビルとの併用によって、肺炎を発症し集中治療室(ICU)での治療を必要とした重症のCOVID-19症例に対してコンパッショネート使用による治療を実施した。

ナファモスタットは、抗凝固薬や膵炎治療薬として国内で使われてきた薬剤。ファビピラビルはRNAポリメラーゼを抑制することでSARS-CoV-2のヒト細胞内での増殖を抑制すると考えられている。ナファモスタットとファビピラビルはウイルスの増殖過程における作用部位が異なることから、両者を併用することで相加的な効果が期待される。また、COVID-19の一部の患者では、血管内での病的な血栓の形成が病気の悪化に関与していると考えられ、ナファモスタットの抗凝固作用が有効であると期待されている。

11例中10例で臨床症状が軽快

ナファモスタットとファビピラビルを投与したのは、ICUでの管理が必要となったCOVID-19の重症患者11例(2020年4月6日〜21日に入院)。投与後、臨床経過を観察した。11例のうち8例が人工呼吸器を必要とし、このうち3例でECMOを使用した。ナファモスタットは0.2mg/kg体重/時で点滴静注、中央値14日間投与。ファビピラビルは初日3,600mg/日、2日目からは1,600mg/日で、中央値14日間投与した。

その結果、ナファモスタットとファビピラビルの併用患者11例について、10例で臨床症状の軽快が見られた。軽快した症例は、人工呼吸器使用が7例、うち3例がECMOを必要としたが、平均16日で人工呼吸器が不要となった。患者は中央値68才、男女比は10:1だった。海外の施設からの論文では、ICUでの治療が必要となったCOVID-19の症例では70~90%の患者が人工呼吸器を必要とし、死亡率は30~50%とされている。海外での重症感染者に対する治療と比較して、東京大学医学部附属病院では重症患者においても良好な経過をたどり、ナファモスタットとファビピラビルの併用の有効性を示唆するものだった。

今回の観察研究の結果は、SARS-CoV-2抑制に対するナファモスタットとファビピラビルの異なる作用機序と同時に、ナファモスタットの抗凝固作用の有効性が示唆されるもの。ファビピラビルの単独での効果は国内の臨床研究の結果が現時点では報告されていないことから、評価は慎重に行う必要があるが、ナファモスタットの単独効果、並びにナファモスタットとファビピラビル併用効果の両方が考えられ、今後の臨床研究の必要性を示唆する結果となった。

なお、同観察研究は、東京大学大学院医学系研究科・医学部の新規診療等検討委員会の倫理審査後、承認されている。また、ナファモスタットとファビピラビルの併用効果を観察する特定臨床研究は、2020年5月より東京大学医学部附属病院をはじめ国内6施設で開始され、5月末時点では8施設で行われている。

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