MEK1/2阻害剤、小児患者対象のP1/2試験で客観的奏効率66%
アストラゼネカ株式会社は6月22日、セルメチニブ硫酸塩(以下、セルメチニブ)が希少遺伝性疾患である「神経線維腫症1型」(NF1)の治療薬として、日本における希少疾病用医薬品に指定されたと発表した。
セルメチニブ、分裂促進因子活性化プロテインキナーゼ(MEK1/2阻害剤)。MEK1/2タンパク質は、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)経路の上流調節因子で、MEKとERKは共に、RASによって調節されるRAF-MEK-ERK経路の重要な構成要素であり、さまざまながんで活性化されることが多い。
米国がん治療評価プログラムによる「SPRINT試験」のP1/2で、手術不能な叢状神経線維腫(PN)を有するNF1小児患者を対象に、セルメチニブ単剤を経口投与(1日2回)した結果、客観的奏効率(ORR)は66%(50例中33例、部分奏効を含む)を示した。ORRは、完全奏効または20%以上の腫瘍縮小を評価基準とする部分奏効が確認された患者数から算出している。
2歳以上のNF1小児患者対象で米国承認、欧州は審査中
NF1は3,000~4,000人に1人が罹患する遺伝性疾患。NF1遺伝子の自発的あるいは遺伝的変異により発症し、皮膚あるいは皮下の柔らかい塊(皮膚の神経線維腫)、皮膚色素沈着(カフェ・オ・レ斑)がみられる他、患者の30~50%でPNを伴う。PNは外見の変化や、運動機能障害、疼痛、気道機能不全、視覚障害、腸や膀胱の機能不全および変形などの病的状態を引き起こす可能性がある。PNは幼児期に始まり、重症度は多岐にわたる。また、この疾患によって平均余命が8~15年短縮する可能性があるといわれている。
同社とMSDがセルメチニブを共同開発、商業化を進めており、2020年4月、症候性かつ手術不能なPNを有する2歳以上のNF1小児患者に対する治療薬として米国で承認された。また、PNを有するNF1を適応症とする承認申請が欧州医薬品庁によって受理・審査中であり、その他の地域においても承認申請が検討されている。
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・アストラゼネカ プレスリリース