千葉大学医学部附属病院と理化学研究所は6月29日、頭頸部癌の免疫細胞療法として、iPS細胞からNKT細胞を作製した「iPS-NKT細胞」を人に投与する医師主導治験を開始すると発表した。これまで千葉大は、頭頸部癌の新たな治療法開発に向け、強力な抗癌作用を持つNKT細胞の臨床研究を行ってきたが、さらに生存率を高めるため、iPS細胞から作製したNKT細胞を投与する初めての治療法を行うことになった。
千葉大では、リンパ球の一種で癌に強い攻撃力を発揮するNKT細胞の研究を進めてきており、2013年には、頭頸部癌に対する免疫細胞療法としてのNKT療法が「先進医療B」として承認され、臨床研究が進められてきた。
ただ、NKT細胞は人の血液中にわずかしか存在せず、個人差も大きく実用化へのハードルが高かったのが現状。そこで今回、理研と連携し、生存率の改善を目指してiPS細胞からNKT細胞を作製した「iPS-NKT細胞」を頭頸部癌に直接投与する医師主導治験をスタートさせることになった。
これまでにiPS-NKT細胞が人に投与されたことはなく、高機能を備えたままの細胞を増殖させることができるため、高い治療効果と実用性が期待されている。
医師主導治験は、標準治療後または標準治療の適応とならない再発・進行頭頸部癌患者4~18人を対象に、単施設非盲検の用量漸増試験として実施されるもの。主に忍容性と安全性を評価する。iPS-NKT細胞を腫瘍栄養動脈内にカテーテルを用いて到達させ、投与する予定。
iPS-NKT細胞は、NKT細胞の抗腫瘍効果を担癌状態でも最大限発揮できるように開発されたiPS細胞由来のNKT細胞であり、今回の医師主導治験はiPS-NKT細胞を用いた初めての治験となる。