小児神経芽腫の効果的治療法の確立は重要課題
金沢大学は6月30日、131I標識3-ヨードベンジルグアニジン(131I-MIBG)と呼ばれる放射性治療薬を用いた小児神経芽腫に対する放射線治療の効果を検証した結果を発表した。これは、同大附属病院核医学診療科の萱野大樹講師と医薬保健研究域医学系の絹谷清剛教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Annals of Nuclear Medicine」のオンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
神経芽腫は、主に5歳以下の小児の発症率が高く、小児悪性腫瘍の中では白血病に次いで多い。がんの悪性度が比較的低いケースでは標準的な手術や化学療法で対応できる場合が多い一方、悪性度が高い患児に対しては体により負担の掛かる化学療法や幹細胞移植、放射線治療を行う必要がある。しかし、これらの治療法を用いても期待される効果が得られるとは限らない。そのため、小児神経芽腫の効果的な治療法の確立が重要な課題とされている。
難治性神経芽腫20例で検証、5年生存率40%以上に
今回、研究グループは、悪性度が高い難治性神経芽腫を患う20人の患児を対象に、131I-MIBGを投与した場合の効果を検証した。131I-MIBGは、降圧剤であるグアニジンをヒントに開発されたノルアドレナリンに類似した物質の3-ヨードベンジルグアニジンを、放射線の一種であるβ線を放出する131Iで標識したもの。神経芽腫や褐色細胞腫などの腫瘍細胞に取り込まれる性質を有する。
検証の結果、通常、難治性神経芽腫を発症した患児の5年生存率は20%以下であるところ、131I-MIBG投与を加えた治療を施した患児では5年生存率が40%以上となることが確認された。また、化学療法や外部から全身に放射線を照射する全身照射などの治療法では、重篤な吐き気や嘔吐、腎障害、ホルモン異常などの副作用があるが、131I-MIBGを用いた放射線治療では、そのような副作用はほとんど確認されなかった。
今回の成果は、131I-MIBGを用いた放射線治療の有用性および安全性を示すもの。研究グループは、「今後、臨床研究をさらに積み重ねることにより、131I-MIBGと化学療法や幹細胞治療とを組み合わせたより効果的な治療法が確立され、日本の公的医療保険適用の対象となる治療につながることが期待される」と、述べている。
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